日立、熟練者に頼らず異なる設備で同品質な加工や成形が行える技術を開発:FAニュース
日立製作所は、異なる設備で同品質な加工ができる「加工、成形誤差補正技術」を開発した。切削加工、塑性加工、射出成形で、熟練者の経験やノウハウに頼らずに異なる拠点でも同品質な製品が得られる。
日立製作所は2020年2月26日、異なる設備で同品質な加工ができる「加工、成形誤差補正技術」を開発したと発表した。切削加工、塑性加工、射出成形で、熟練者の経験やノウハウに頼らずに異なる拠点でも同品質な製品が得られる。
開発した技術は、加工機と工具の剛性を考慮した切削加工の加工誤差補正技術、金型に必要な機能を分割した機能ブロック合成法による鍛造工程と金型形状の自動設計技術、センサー内蔵金型によるセンシングデータと流動解析を組み合せた射出成形の形状誤差補正技術の3つとなる。
同技術を活用すると、加工機の設置環境による変化や経年劣化などに起因する個体差に合わせた補正ができ、複数工場の複数台の加工機を組み合わせた量産でも、加工や成形誤差の小さい加工ができる。形状誤差を切削加工は±25μm以下、鍛造は±5%以下、射出成形は±1%以下に制御可能だ。
切削加工の加工誤差補正技術では、熟練者が推測している設備の主軸の剛性、工具の剛性を考慮した加工誤差生成メカニズムを物理モデル化した。工具先端の適正な狙い位置を推測し、補正をする。切削加工機の主軸の剛性は、主軸に加わる力と、主軸の変形量の関係を加工機ごとに実測して決定することで高精度な予測ができる。切削加工は、ミーリングとターニングに対応する。
鍛造工程と金型形状の自動設計技術では、熟練者のノウハウをデジタル化するため、分割エリアの特徴に求められる機能ブロックを準備する。そのブロックをプレス機の最大荷重未満となる工程ごとに最適な形状となるように自動配置、合成し、金型を設計する鍛造工程と金型形状の自動設計技術を開発した。
射出成形の形状誤差補正技術では、射出成形用金型に内蔵した各種センサーから得られるセンシングデータを解析し、各種特徴量を抽出する。製品形状での流動解析を組み合せ、射出成型機の入口(射出点)の状態を予測した結果を基に、特徴量が一致するよう自動で加圧力、温度、射出速度などを補正。異なる射出成形機でも同様の成形条件が得られる射出成形時の誤差補正技術を開発した。
今後は、同技術を用いたモノづくりをグローバルに展開し、熟練者や加工設備に依存せず、どこでも同品質に加工できる製造プロセスを提供していく。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 工作機械の共通インタフェース「umati」とは何か?
工作機械のスマート化に向けて注目されている通信規格が「umati」である。本連載では「umati」とはどういう規格なのか、技術的にはどういう背景があるのか、どのような活用シーンがあるのかについて、紹介する。第1回となる今回は「umati」とは何かをテーマに概要を取り上げる。 - 工作機械も4.0へ、シェフラーとDMG森精機が描く「マシンツール4.0」
ドイツのインダストリー4.0が大きな注目を集める中、工作機械にもIoTを積極的に活用する動きが出てきている。軸受部品を展開するシェフラーと、工作機械メーカーのDMG森精機は工作機械のインダストリー4.0対応を目指す「マシンツール4.0」プロジェクトを推進している。 - アップルVSサムスン訴訟を終わらせた日本の工作機械の力
知財専門家がアップルとサムスン電子のスマートフォンに関する知財訴訟の内容を振り返り「争う根幹に何があったのか」を探る本連載。最終回となる今回は、最終的な訴訟取り下げの遠因となった「新興国への技術移転」の問題と「なぜ米国で訴訟取り下げを行わなかったのか」という点について解説します。 - 好況に沸く工作機械メーカーは盤石か!? 課題は営業力にあり
企業再生請負人が製造業の各産業について、業界構造的な問題点と今後の指針を解説する本連載。今回はリーマンショック前の勢いを取り戻しつつある日系工作機械メーカーの動向と課題について取り上げる。 - 世界を変えるAI技術「ディープラーニング」が製造業にもたらすインパクト
人工知能やディープラーニングといった言葉が注目を集めていますが、それはITの世界だけにとどまるものではなく、製造業においても導入・検討されています。製造業にとって人工知能やディープラーニングがどのようなインパクトをもたらすか、解説します。 - 人工知能は製造現場でどう役に立つのか
人間の知的活動を代替するといわれる人工知能が大きな注目を集めている。ただ、製造現場で「使える」人工知能は、一般的に言われているような大規模演算が必要なものではない。「使える人工知能」に向けていち早く実現へと踏み出しているファナックとPFNの取り組みを紹介する。