部品ではなくクルマの性能を見て、モデルベース開発のための計測事業開始:モデルベース開発(3/3 ページ)
モデルベース開発や制御開発を手掛けるAZAPAが、計測事業に乗り出した。早稲田大学 次世代自動車研究機構と共同で、早稲田大学 本庄キャンパス(埼玉県本庄市)にシャシーダイナモを設置した。サプライヤーが部品を持ち込むと、車両に自社の部品を組み込んで燃費などの性能を測定する。その測定データを基にモデルを構築し、シミュレーションで制御やハードウェアの伸びしろを検討できるようにする。
最終性能を意識したすり合わせを
AZAPA 代表取締役社長の近藤康弘氏は「サプライヤーにもっと計測技術やモデルを活用してほしい」と計測事業強化の狙いを語る。
近藤氏は「工業製品の最終性能はさまざまな部品を組み合わせた上で決まる。自社の部品に飛び抜けた性能を持たせれば採用されるとは限らず、システム全体を見る力が必要だ。性能のバランスを見て、それぞれの部品がどうあるべきか調整できる人材が、日本の自動車メーカーからどんどん減っていく。一方で、海外ではサプライヤーであっても、そうした部分に長けている」と指摘する。
欧米では、モジュールやコンポーネントのサプライヤーでも車両性能を意識して開発する。これは転職やキャリアへの意識の違いによるもので、欧米では車両レベル、システムレベルの開発経験を持った人材が流動する。日本で最終性能を意識した開発ができるのは、パワートレイン部品で自動車メーカーと長い付き合いがあり、ハードウェアに対する理解とノウハウを蓄積してきた一部のサプライヤーに限られているという。
現状において、日本の大多数のサプライヤーは単独で自社製品のモデルをつくるのは簡単ではない。しかし、オープンな計測、分析サービスを拡充すれば、単独では計測設備を持てなかった企業や大学などが自動車メーカーと同じような環境で開発や研究を進めることができる。このようにして、技術開発の競争力向上を助けたいとの思いがある。
「自動運転やシェアリング、モビリティサービスなどの新しい価値観や、環境規制への対応は、クルマの基本性能があってこそだ。自動車はシェアが大きいほどコストを下げられるが、シェアが低下すると機能や性能の開発が重荷になる。クルマの基本性能をどう作り込むかが、日本の自動車産業の生き残り方ではないか」(近藤氏)
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