品質検査を自動化して全数検査に、ベンチャーの「光コム技術」が量産、普及へ:スマートファクトリー(2/2 ページ)
自動化された全数検査の“普及”へ――。ハードウェアベンチャーのXTIA(クティア、旧社名:光コム)は、ニコンやJUKI、双日、INCJから総額17億円を調達し、「光コム技術」の事業拡大に乗り出す。出資の内訳は、ニコンが8億円、INCJが6億円、JUKIが2億円、双日が1億円となる。
品質検査の受託にビジネスチャンス
双日は、光コム技術によって品質検査事業を強化する。同社は2017年7月、自動車部品の品質検査で米国最大手のStratosphere Quality(ストラトスフィア クオリティー)の全経営権を取得し、品質検査事業に参入した。新型車のモデル数増加や部品調達先の多様化、リコールの件数や規模の拡大、自動車部品の精密化などを背景に、品質検査に対する需要が拡大すると見込んでおり、双日の自動車本部の新たな収益の柱と位置付けられている。
双日とクティアが考える品質検査受託のコンセプトは2パターンあり、1つは、サプライヤーから自動車メーカーに納入される部品に対し、倉庫や工場内で品質検査サービスを提供するというものだ。もう1つは、双日とクティアが検査受託センターにおいて、サプライヤーの品質検査を請け負う形だ。サプライヤーが初期投資なしで自動化された外観検査を利用できるようにする。
クティアの八木氏は「ティア1、ティア2サプライヤーの多くが工場の自動化に取り組んでいるが、検査は自動化が進んでいない。自動検査が2割、人による検査が8割だ。ただ、サプライヤーは中小企業も多く、検査の自動化に向けた大型投資は難しい。また、検査は付加価値を生まないので、個社で投資しにくい部分もあるのではないか。さらに、熟練工のノウハウに依存した検査を続けることへの不安や、検査員の人数が足りなくて増産できないという声も聞いている。検査をなんとかしたい、というニーズがある」と品質検査の外注化への手応えを語った。
双日とクティアの協業は間もなくスタートし、双日を通して品質検査における光コム技術の活用を提案していく。また、両社で光コム技術による品質検査データと、AI(人工知能)技術を組み合わせた「検査プラットフォーム」の展開などにも取り組む。
双日は、ストラトスフィア クオリティーの経営権をグリーンテックとの共同出資(双日65%、グリーンテック35%)で獲得した。グリーンテックはストラトスフィア クオリティーと同じく自動車部品などの品質検査を手掛けており、顧客数は2000社に上る。日本の他、タイや中国にも拠点を構える。一方、ストラトスフィア クオリティーは、北米やメキシコに拠点を持ち、3000社の顧客を抱える。また、自動車関連の拠点が多い米国東部エリアには、依頼から2時間以内で検査サービスを提供する体制を持つ。双日とグリーンテックは、ストラトスフィア クオリティーの顧客ネットワークを相互に活用し、日米の両市場のシナジーを追求しながら品質検査事業を拡大する。
20%にとどまる検査の自動化をどこまで引き上げられるか
クティアの光コム技術は、外観検査を100%自動化するわけではない。現時点では、ガラスや樹脂が対象だと3次元計測が難しい。また、自動車メーカーとの協業で検査の自動化が実現できたのは、エンジン部品やブレーキ、電動車のインバーターなど20〜30種類の部品にとどまっており、「数万点もの部品が使われる自動車のまだ一部」(八木氏)という段階だ。
八木氏は「検査の自動化は現状の20%から、光コム技術で50%には高められる」と話す。今後2〜3年以内に、樹脂に対応した波長のレーザー光を開発する他、揺れ補正技術によってロボットアームに光コムセンサーを取り付けられるようにし、ロボットアームによるさまざまな形状のワークの検査を実現する。また、溶接箇所や金型などでも光コム技術のニーズがあるとしている。
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