「ChaoJi(チャオジ)」は超急速充電の世界統一規格となるのか:和田憲一郎の電動化新時代!(36)(4/4 ページ)
日中共同による超急速充電規格が大きな進展を見せている。ネーミングを「ChaoJi(チャオジ:超級)」とし、仕様書発行は2020年末までを目指して進めているようだ。なぜここまで急激に進展してきたのか、どのような仕様で、急速充電器や車両はどう変わるのか、今後の課題は何なのか、これらについてCHAdeMO協議会への取材を敢行した。
ChaoJiの正式公開タイミング
和田氏 ガンやケーブルはまだ試作品とのことであるが、正式な発表はいつ行うのか。
吉田氏 CHAdeMO3.0としての発表会を2020年4月1日に予定している。当日はChaoJiタイプの超急速充電器や車体側のインレット、さらには近年、二輪車のCHAdeMO仕様も検討していることから、これらを合わせてCHAdeMOのフルライン化として公表したい。
ChaoJi急速充電器の価格
和田氏 今回のChaoJi急速充電器の価格はどれくらいを想定しているのか。
吉田氏 現在各社が開発中であり、まだ詳細をいえる段階ではない。しかし、ChaoJiは液冷を採用しており、ラジエーターが必要であること、さらに出力が大きいことからキュービクル(高圧受電設備)が必要となるので、かなり高くなることが予想される。なお、これらフル装備のものと、そこまで必要ないタイプなど、分けて考えることも必要と考えている。
今後の課題は何か
和田氏 今後の課題や対応について教えて欲しい。
吉田氏 まずはCHAdeMO3.0の仕様書を2020年内に仕上げることにある。その後、中国など各国とChaoJi普及シナリオを協議していきたい。またIEC(国際電気標準会議)にも、ChaoJiを日中共同で提案していきたい。
このように、日中共同でChaoJi急速充電方式を開発しているわけだが、私が感じたことが2つある。1つは、中国はこのChaoJi急速充電開発に対して、とてもまじめに取り組んでいることである。つまり中国側は、EVなどの新エネルギー車を将来どのようにして成長させるべきか、インフラも含めて真剣に考えている。
もう1つは、中国の影響力の大きさである。中国が参加することになると、欧米のCCS陣営やテスラなども参加してくる。世界最大の自動車市場であり、かつ新エネ車市場でもあることから、どの陣営も注目せざるを得ないのではないだろうか。
取材を終えて
ChaoJiの試作品を見て正直驚いた。現在の50kW用急速充電器は、ガンが大きく重いという指摘もあり、これが900kWとなると、とても人間が扱うレベルではないのではと思っていた。しかし、今回の試作品では、むしろ従来より小型軽量化が図られている。心から関係者の努力に敬意を表したい。
また過去よりいきさつのあった欧米のCCS陣営、さらにはテスラとも国際会議版として協議をしているとのこと。欧米でも大容量の電池を搭載する車両や、電動バス、トラックの需要がある。今回の仕様は、彼らにも十分受け入れる素地を持っており、世界統一規格として近づいているように思われる。
電動車両と充電インフラは普及のための両輪であり、このように充電インフラの規格が統一に近づくと、普及に向けて一段と弾みがつくのではないだろうか。まだまだ紆余(うよ)曲折あるかもしれないが、ビッグピクチャーを描きながら、取り組んでいただくことを願うばかりである。
筆者紹介
和田憲一郎(わだ けんいちろう)
三菱自動車に入社後、2005年に新世代電気自動車の開発担当者に任命され「i-MiEV」の開発に着手。開発プロジェクトが正式発足と同時に、MiEV商品開発プロジェクトのプロジェクトマネージャーに就任。2010年から本社にてEV充電インフラビジネスをけん引。2013年3月に同社を退社して、同年4月に車両の電動化に特化したエレクトリフィケーション コンサルティングを設立。2015年6月には、株式会社日本電動化研究所への法人化を果たしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ≫和田憲一郎の電動化新時代! バックナンバー
- 日中共同による急速充電新規格は、世界標準となるのか
EV(電気自動車)用の急速充電仕様について新たな動きが出てきた。日本と中国の共同検討によって急速充電の新規格を策定する動きである。既に市場で固まってしまったように見える急速充電規格であるが、なぜ今になって新たな規格作成なのか。狙いや、具体的な統一方法、さらには実施時期や市場をどう考えるのか。まだ仕様が固まらないと思われる中で、関係者にインタビューを敢行した。 - EV向けワイヤレス給電、実用化の最終段階へ!
先般、EV(電気自動車)用充電インフラに関して重要な出来事があった。ワイヤレス給電はこれまで米国のベンチャー企業であるWiTricityと、半導体大手のQualcommが激しい国際標準化争いを続けてきた。しかし、WiTricityがQualcommのEV向けワイヤレス給電事業「Qualcomm Halo」を買収することとなったのである。これにより、標準化争いは終止符が打たれるものの、すぐに実用化に移れるのだろうか。 - ダイソンEV撤退をケーススタディーとして考える
EVを開発すると宣言し、撤退した案件としては、投資額や雇用人員ともダイソンがこれまで最大規模であり、この撤退の真因に迫ることは、今後のEV開発に極めて重要ではないかと考えた。あくまで筆者の見立てであるが、元EV開発の経験からダイソンEV撤退をケーススタディーとして、EV開発の困難さおよび事業の難しさについて考えてみたい。 - 国際標準となったCHAdeMOのジレンマ、高出力化とコストの兼ね合い
急速充電の規格として国際標準となったCHAdeMO規格が、ここにきて大幅に使用電流値を上げるなど仕様のバージョンアップを考えているようだ。なぜ、この段階で仕様の大幅に変更するのか。その背景や他規格との連携、課題などについてCHAdeMO協議会関係者からヒアリングを行った。 - ようやく見えてきた、車載ソーラーパネル採用の兆し
これまで自動車メーカーは、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)にソーラーパネルの搭載を検討してきたが、なかなか実現できなかった。その主な理由は、太陽光発電による実走行距離が短く、費用対効果の面からも採用が困難だったからである。また技術的にも課題があった。しかし、ここにきて採用に向けた兆しが見えてきた。