BIMと連携してロボットの自律走行を支援する基盤システム、竹中工務店が開発:ロボット開発ニュース
竹中工務店はBIMとの連携によってロボットの自律走行とリモート監視を可能にする、クラウドベースの「建設ロボットプラットフォーム」を開発したと発表した。
竹中工務店は2020年2月14日、アマゾンウェブサービス(AWS)が東京都内で開いた記者会見において、Building Information Modeling(BIM)との連携によってロボットの自律走行とリモート監視を可能にする、クラウドベースの「建設ロボットプラットフォーム」を開発したと発表した。開発に当たってはAWSが提供するロボットのアプリケーション開発を支援するクラウドサービス「AWS RoboMaker(以下、RoboMaker)」を活用した。
竹中工務店 生産本部 生産企画部 部長 松尾亨氏によると、建設業界における技能労働者人口は1997年から2014年にかけて26%減少しており、労働力不足が深刻化しているという。松尾氏は、問題の背景には技能労働者の高齢化や就職者数の減少といった問題があると指摘した上で「課題解決には建設用ロボットやデジタル技術を活用することで生産性を向上させ、少人数でも仕事が回る体制を整えるといった対策が必須となる」と語った。
そこで同社が検討したのが、3Dデータを使ってビルなどの建築を管理するBIMと建設ロボットの連携によって施工作業の自動化を可能にする基盤システム「建設ロボットプラットフォーム」の開発だ。「例えばこれまでAGV(無人搬送車)で資材を搬送する際には、反射材を取り付けたカラーコーンやQRコードで作業範囲を指定し、搬送ルートをあらかじめ決める必要があった。だが、AGVがBIMと連携することで建物の地図データを自ら入手できるようになれば、AGVは自身の位置を推定して、それに基づいて最適な経路を選択できるようになる。結果として人手作業を省力化できる」(松尾氏)。
だが、こうしたプラットフォームを実現するためには、ロボットに高度な自己位置認識技術や画像認識技術を搭載しておかなければならない。また、プラットフォーム上でロボットをリモートで管理する技術や、それを支えるデータ通信技術なども求められるため「当社の技術リソースのみで、短期間のうちに開発を行うことは困難だと判断した」(松尾氏)という。そのため、同社は機械学習に強みをもつベンチャー企業のブレインズテクノロジーに技術協力を依頼した。そこで提案されたのが、AWSが提供するRoboMakerの活用だった。
RoboMakerはロボット開発用のソフトウェアフレームワークとして広く使われているROS(Robot Operating System)を、AWSが提供する画像/ビデオ分析ツールやロボット端末のモニタリングツールなどに接続できるようにした、クラウドベースのロボティクス開発環境だ。ブレインズテクノロジー CTO 中澤宣貴氏は「RoboMakerはロボット開発における開発、シミュレーション、フリート管理を全て備えた、現時点で唯一のマネージドサービスだ」と評価する。「最新のコンピュータリソースを使っているため、異なる条件を持たせた大規模なシミュレーション環境を並列かつ高速に実行できる。また、採用されている技術の多くにOSS(オープンソースソフトウェア)を活用しているため、オープンで拡張性の高いプラットフォームが構築可能になる。竹中工務店の要望を全て満たせるサービスだと考えた」(中澤氏)。
開発した建設ロボットプラットフォームはBIMデータと連携することで、シミュレーションモデルの組み込みや、地図生成、経路シミュレーション、クラウドからのロボットの操作を全て実行できる。また、ロボットのバッテリーの電力容量や動作状況の遠隔監視も可能な上、ロボットの制御に用いる共通ソフトウェアの開発やその更新なども全てプラットフォーム上で完結させられる。ロボットの動作設定についても、逐一手動で指定する必要のないシンプルなプロセスとした。「BIM情報を基にして、ロボットに直感的に指示を出せるようにした」(松尾氏)という。
なお、建設ロボットプラットフォームは2020年6月まで実証実験を積み重ねた後、「2020年度中には本格的な運用を開始する予定だ」(松尾氏)という。
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