自作の自動走行モデルでレースに挑め! AWS SummitのDeepRacerリーグが大人気:人工知能ニュース
自動運転車を自作して競わせる時代に――。アマゾン ウェブ サービス(AWS)が千葉県の幕張メッセで開催しているユーザーイベント「AWS Summit Tokyo 2019」(2019年6月12〜14日)では、自作の自動走行モデルでレースをする「AWS DeepRacer リーグ」を実施。待ち時間が200分を超える時間帯もあるなど、大きな人気を呼んでいる。
自動運転車を自作して競わせる時代に――。アマゾン ウェブ サービス(AWS)が千葉県の幕張メッセで開催しているユーザーイベント「AWS Summit Tokyo 2019」(2019年6月12〜14日)では、自作の自動走行モデルでレースをする「AWS DeepRacer リーグ」を実施。待ち時間が200分を超える時間帯もあるなど、大きな人気を呼んでいる。
プログラム初心者でも参加可能な自動運転タイムトライアル
「AWS DeepRacer リーグ」は、機械学習の教育用にAWSが開発した18分の1サイズのレーシングマシンとシミュレーターを使い、自作した学習モデルによる自律運転でのスピードを競うというものである。仮想サーキットでのバーチャル空間上のタイムトライアルとともに、世界20カ所でAWSが開催している「AWS Summit」の会場で、「SUMMITサーキット」として、現実世界でのタイムトライアルを実施している※)。
※)関連記事:大日本印刷がAI人材倍増へ、AWSの自律走行レーシングカーで強化学習を学ぶ
各リーグの優勝者には、2019年12月に米国ラスベガスで開催されるAWSのグローバルイベント「re:Invent」への無料招待と、そこで開催されるチャンピオンシップ予選への参加権が贈呈される。また、ラップタイムのベスト10に入っても賞品がもらえる。
レーシングマシンとシミュレーターの組み合わせ
「AWS DeepRacer」はレーシングマシンとシミュレーターの組み合わせで構成されている。
レースに使う18分の1スケールのマシンは、CPUにIntel Atomプロセッサを搭載。ソフトウェアはUbuntu OS 16.04.3 LTS、Intel OpenVINO ツールキット、ROS Kineticを採用している。メモリは4GB RAMで、ストレージは32GBを搭載。外部との通信では、Wi-Fi 802.11acを使用する。カメラはMJPEGの4Mピクセルカメラで、その他、統合済み加速度センサーとジャイロスコープなどをセンサーとして採用する。
シミュレーターはAWSが提供する各種のアプリケーションと統合している点が特徴となる。強化学習モデルトレーニング用に「Amazon SageMaker」、レーシングシミュレーターの提供用には「AWS RoboMaker」、仮想シミュレーション記録映像の動画再生用には「Amazon Kinesis Video Streams」、モデルのストレージ用には「Amazon S3」、ログ収集用には「Amazon CloudWatch」など、一元的にこれらを活用し、簡単に強化学習を実現してカスタムモデルを構築可能としている。
シミュレーション作成から実際にレースを行うまでの流れは以下のような形となる。
- 「AWS DeepRacer 3D レーシングシミュレーター」で、強化学習モデルを作成し、トレーニングする
- 仮想のレーストラックでモデルを評価し、報酬関数とハイパーパラメータを調整して、再トレーニングでラップタイムを短縮する作業を繰り返す
- モデルを仮想リーダーボードに提出し、「AWS DeepRacer リーグ」に参加する
- AWS DeepRacer(マシン)に学習モデルを実装し、実際のレースイベントで競う
中央線などを認識し報酬を設定する
マシンからの外部環境の認識としては、カメラの映像のみであるため、基本的には中央線や道路の両脇の線などを認識することで、正しいルートを走行できるようにする。その他、マシンの操舵角度や速度などを、ジャイロセンサーや加速度センサーで認識する。これらの最適な組み合わせを学習し、自律的に走行できるように報酬関数を設定するというのがポイントだ。
一般的な手法では、中央線に近い位置で走行できている場合に高い報酬を設定し、離れるほどに報酬が下がるという設定をする。そうすると機械学習により、より報酬が高い方向に操舵されることになり、中央線に沿って運転ができるようになる。ただ、ラップタイムを短くすることを考えるとスピードを上げることが求められる。スピードが高いままコーナーなどに入ると、報酬の低下が認識できないまま、一気に中央線から離れる場合などもあり、これらのバランスが難しくなる。また、ラップタイムを縮めるためには、コース取りも重要になるが「常に中央線を基準としてよいのか」という点も難しいポイントになるとみられる。
「AWS DeepRacer リーグ」のリアルでのレースは日本では初めての開催ということもあり、会場ではオープン直後から行列が生まれ、200分以上の待ち時間になった時間帯もあるという。レースは会期最終日である2019年6月14日まで開催され、優勝者を決める。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 組み込みAIは必要不可欠な技術へ、推論に加えて学習も視野に
2017年初時点では芽吹きつつあった程度の組み込みAI。今や大きな幹にまで成長しつつあり、2019年からは、組み込み機器を開発する上で組み込みAIは当たり前の存在になっていきそうだ。 - 芽吹くか「組み込みAI」
第3次ブームを迎えたAI(人工知能)。製造業にとっても重要な要素技術になっていくことは確実だ。2017年からは、このAIを製品にいかにして組み込むかが大きな課題になりそうだ。 - AIと機械学習とディープラーニングは何が違うのか
技術開発の進展により加速度的に進化しているAI(人工知能)。このAIという言葉とともに語られているのが、機械学習やディープラーニングだ。AIと機械学習、そしてディープラーニングの違いとは何なのか。 - 世界を変えるAI技術「ディープラーニング」が製造業にもたらすインパクト
人工知能やディープラーニングといった言葉が注目を集めていますが、それはITの世界だけにとどまるものではなく、製造業においても導入・検討されています。製造業にとって人工知能やディープラーニングがどのようなインパクトをもたらすか、解説します。 - レベル3の自動運転の普及は伸び悩む? 提案は無人運転シャトルや小口配送に
「レベル3のシェアは2030年から横ばい」という市場予測を反映してか、2019年のCESでは無人運転車に関する展示が多くみられた。ドライバーが運転に復帰する必要のあるレベル3の自動運転と、システムが全ての動的運転タスクを担うレベル4〜5。それぞれについて、2019年は法的な議論や技術の熟成が一層進みそうだ。 - 1社では難しい「レベル4」、オープンソースの自動運転ソフトが提供するものは
「人とくるまのテクノロジー展2018」(2018年5月23〜25日、パシフィコ横浜)の主催者企画の中から、ティアフォーの取締役で、名古屋大学 未来社会創造機構 特任教授でもある二宮芳樹氏の講演を紹介する。