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資生堂が国内工場を新設する理由、高級ブランドは「人とロボットの共存」で生産モノづくり最前線レポート(2/2 ページ)

「JAPAN PACK 2019(日本包装産業展)」の特別講演に、資生堂 生産部長の大前勝己氏が登壇。「グローバル生産体制における自働化技術課題」をテーマに、資生堂のビジネスの変革と、それに対応する生産体制構築の中で顕在化した課題と解決に向けた取り組みについて紹介した。

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高評価の「メイドインジャパン」、国内工場を新設へ

 資生堂の工場は、日本国内に3カ所(加えて2019年12月24日から那須工場(栃木県大田原市)が本稼働を開始)、海外に7カ所ある。生産数量は国内が半数以上を占め「65%がメイドインジャパン」となっている。大前氏は「化粧品市場ではメイドインジャパンの評価が非常に高く、特に女性は安心・安全を求めており、そこに資生堂の高い品質、日本人のまじめな性格などが受け入れられて、われわれのビジネスは拡大している」と強調する。そのため、新たに3つの新工場(先述の那須工場を含む)を国内に建設しており、日本での生産数量を増強する方向にある。

 事業別ではプレステージを主力にした取り組みが成功している。プレステージはブランド別売上高構成比で45%を占め、さらに拡大する勢いだ。同社では、もともと大量生産するパーソナルケア向け製品は構成材料がシンプルである理由も含めて、専用機械をベースに自働化を進めてきた。近年は人手不足もあり、コスメティクスについても構成材料の少ない製品はロボットを用いた自働化を推進している。

 さらに、プレステージの売れ行きが伸びてきたことにより、それらの生産の自働化も検討している。プレステージの場合、多品種少量で構成材料が多く、複雑な組み合わせが必要であり、高級品かつ外観が多岐にわたる(少しでも外観に傷が付くなどすると出荷できなくなる)などの課題があり、自働化する際には、これらの課題の解決策が求められている。

 まず、多品種少量への対応については事業面でのサポートがあった。資生堂はこれまで多くのブランドを持ち、マーケティングの投資が分散したことから、ブランドの選択と集中を進めている。さらに、ここ2年間で3800以上のSKU(最小管理単位)を削減しており、2019年は前年と比べ1回当たりの生産量が50〜60%増えている。これにより多品種少量の傾向が一定レベル解決され、生産性が向上した。

 また、生産工程における高級感の維持については、これまで人手に頼っていたところを同社の自働化のコンセプトである「人とロボットの共存」によって対応していく方針である。プレステージ製品は、透明な容器や、金銀の蒸着を行った容器、さらにそれらに塗装を加えるなどして、高級感を与える外観のパッケージを実現している。そして、それらの構成材料も複雑になっている。さらに、化粧品産業をグローバルに展開するには、紙パッケージの表示内容などについては各国で異なる法規があり、これに対応する必要もある。

 資生堂は、リードタイムの短縮を図るために、米国仕様は米国内で、日本仕様は日本国内(大阪)で、欧州仕様はフランスで生産している。それぞれの生産拠点の設備は異なるものの、生産工程については標準化を進めている。しかし、自働化の進捗度は、最低賃金の関係もありそれぞれの地域で違いが出ている。

 プレステージを日本で生産した場合、充填(じゅうてん)機、増し締め機などを使用するが、その後の傷が付きやすい栓の部分は手で締めるなどしている。さらに。複雑な構成材料がある場合の仕上げも、これまでは主に人が行ってきた。生産量が少ない時代はこれで対応できたが、SKUを減らすことで生産量が増えている現在はこれらを自働化する必要がある。自働化の取り組みの方向性としては、いきなり生産ラインに自働化設備を導入するのでなく、部分的かつ徐々に進める形で、人と自働機が共存するようにしている。その上で、化粧品の検査など人の感性の方が優れている作業と、人が苦痛を感じる単純な繰り返し作業などはロボットに置き換えていくようにしている。

 一方、最低賃金の高いフランスの工場では充填機、増し締め機に加えて、1個ケース用ケーサー、外函ケーサーなども導入し、自働化をさらに進めてきた。日本国内でも今後、こられの生産機械を採用するか、同じコンセプトを持った機械を開発することを検討している。

 この他、講演では口紅の生産に関する取り組みなどを紹介。そして「何をロボットにさせ、何をさせないか。ロボットは万能ではない」「マネジメントは環境づくり・人づくりから」「ロボットによる自働化でキーとなるのは、部材の供給と設計」「製品終了後、同じロボットで別の工程の自働化に取り組める生産技術力がロボット活用拡大では重要要素」と人とロボットが協働する上でのポイントを紹介した。

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