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住友ゴムのスマート工場はミドルから発信、スモールサクセスの積み重ねが鍵に:製造業×IoT キーマンインタビュー(3/3 ページ)
大手タイヤメーカーの住友ゴム工業が、タイヤ生産のスマート化に向けた取り組みを加速させている。この取り組みをけん引する同社 タイヤ生産本部 設備技術部長 製造IoT推進室長の山田清樹氏に話を聞いた。
見える化からの「だからもっとデータを取りましょう」
MONOist スマート工場に向けた取り組みを進める中で何が一番大変でしたか。
山田氏 こういった新しい取り組みで、成果を積み重ねて次に段階に進めていくことは容易ではない。今でこそ工場長が旗を振ってくれているが、最初は「IoTって何だ?」「何ができるんだ?」「効果があるのか?」というリアクションだった。
そこで効果的だったのかTableauを使った見える化だった。今まで見えていなかったことを見える化すると業務の効率化に役立つ。そこで「だからもっとデータを取りましょう」と提案することができるし、生産技術の担当者も「ぜひやりたい」と言うようになった。
何よりスモールサクセスの積み重ねが重要だ。もちろん最終的な到達点の姿をイメージしながら進めていくが、投資することの意味を示すためにも、場面ごとに成果を見せなければならない。スモールサクセスを積み重ねることで、指数関数的な伸びになるタイミングがくるはずだ。当社のタイヤ生産におけるスマート化の取り組みは、ちょうどその段階に入るところにある。
経営陣はIoTやAI、DX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組む必要性を認識している。しかし、一定レベルの投資が必要な次の段階に進めるための経営陣の理解を得るには、スモールサクセスで良いのでしっかり分かりやすく示さなければならない。そういった意味で見える化の効果はとても大きい。
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