ベータ線とガンマ線の同時計測で、複数プローブを画像化する装置を開発:医療機器ニュース
理化学研究所は、ベータ線イメージング装置にガンマ線を捉える検出器を組み込み、複数プローブの同時解析を可能にした新装置「MI-IP」を開発した。
理化学研究所は2019年12月27日、ベータ線イメージング装置にガンマ線を捉える検出器を組み込んだ新装置「MI-IP(Multi-Isotope Imaging Plate)」を開発したと発表した。名古屋大学との共同研究によるもので、同装置により、複数のプローブを同時解析できるようになった。
研究グループは、ベータ線(電子または陽電子)を放出する核種の多くが、ベータ崩壊に伴って、エネルギー値が核種に固有のガンマ線も放出することに着目。ガンマ線をベータ線と同時に計測すれば核種を特定できると考え、ベータ線イメージング用のピクセル検出器にガンマ線検出器を追加したMI-IPプロトタイプ装置を開発した。
本装置では、ベータ線イメージング検出器として1枚のLa-GPSシンチレーション検出器(35×35×1mm3)を300μm角にピクセル化したものを使用。ガンマ線検出器としては、43×43×16mm3のBGOシンチレーション検出器を用いた。
このプロタイプ装置を用いて、電子のみを放出する核種(45Ca)と陽電子および消滅ガンマ線を生成する核種(18F)を分布させた対象を撮像した。その結果、画像化された2種類のベータ線放出核種から陽電子放出核種を特定できることを実証した。
また、PETプローブとして用いられ、陽電子を放出する2つの核種(18Fと22Na)を用いた実験では、脱励起ガンマ線を放出する22Naの分布のみを抽出できた。
少量の放射性プローブで画像化できるベータ線イメージングはさまざまな分野で利用されているが、これまで複数のプローブを同時に画像化することはできなかった。研究グループは、今回のプロトタイプ装置をベースに、より高解像かつ撮像視野の広い装置の開発を計画している。
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