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「モノ+データ」の新たな製造業へ、成果創出のポイントは「データ専門会社」MONOist 2020年展望(3/3 ページ)

製造業のデジタル変革は加速する一方で2020年もさらに拍車が掛かることが予想される。その中で立ち遅れが目立っていたデジタル化による「モノからコトへ」の新たなサービスビジネス創出がいよいよ形になってきそうだ。ポイントは「専門の新会社設立」だ。

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データ専門企業を作った東芝の場合

 また、東芝もデータビジネス専門子会社を設立した企業の1つだ。新たにデータビジネス専門企業である「東芝データ」を2020年2月3日に設立することを発表している。東芝グループでは、新たな成長エンジンとして「CPSテクノロジー企業」となることを宣言しているが、そのカギを握るのが、データを基軸とした新たなビジネスの立ち上げである。同社グループの従来事業である、エネルギーやインフラ、製造など従来の東芝の事業領域における知見を生かしつつ、これらのデータをさまざまな領域で活用し新たなビジネス構築を目指す(※)

(※)関連記事:「モノ」から「コト」へ、東芝がCPSデータビジネスの子会社設立

 新会社「東芝データ」の代表取締役CEOに就任予定の東芝の執行役常務で、最高デジタル責任者(Chief Digital Officer)を務める島田太郎氏は「今までのデータビジネスは『サイバー to サイバー』の世界で行われており、ここではシリコンバレーの企業などに太刀打ちできなかった。しかし、これからのデータビジネスの中心は『フィジカル to サイバー』の世界に入る。ここではモノに強い日本企業が存在感を発揮できる」とデータビジネスでの強みについて語っている(※)

(※)関連記事:新生東芝はなぜ「CPSテクノロジー企業」を目指すのか、その勝ち筋

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東芝がIoTの普及拡大を目指すために取り組んでいる「ifLink」のイメージ

データビジネス専門企業を設立する意義

 これらのように、「モノからコトへのサービスビジネス化」を真剣に進めることを考えれば、「データ専門企業」を設立するというのが、1つの流れとなりつつあるといえる。

 「売り切り」のモノ売りビジネスとは異なり、コト売りのサービスビジネスは「顧客との関係性の継続」が最も重要なポイントとなる。顧客の満足度や信頼性が重要な指標となり、顧客価値を継続的に提供し続けなければならない。製品を通じて顧客が生み出すデータを分析し、顧客をより満足させる価値を提供し続けることで、契約の継続やアップセルを実現するということが求められているわけである(※)

(※)関連記事:製造業がサブスクリプションに踏み出す上で理解すべき3つのポイント

 そのためには、自社のリソースだけに縛られず、顧客起点でオープンなコラボレーションを進め、ソリューションを提供していくことが重要となる。これらの考え方は従来の「モノづくりの思想」とはなじまないものがあり、別事業として進めていくことが望ましい。

 さらに、EUの「GDPR(General Data Protection Regulation:一般データ保護規則)」などを含め、個人情報の取り扱いがますます厳格になる中で、プライバシー保護やセキュリティなどの対策をしっかり行った上でデータを流通させるような仕組み作りを行うには、既存の事業内では難しい。こうした背景からも「データ専門子会社」で新たなサービスビジネス創出を目指すという流れが生まれてきているのだ。

 これらの動きが一つの潮流となっていても、データビジネス専門子会社が必ずしも成功するとは限らない。最終的には、顧客価値を実現できなければビジネスとしては成功しないからだ。しかし、「製造業におけるデータビジネスの体制」を考えた場合、一種の正解の形が生まれたことで、2020年はこうした動きを軸とした「製造業のサービスビジネス化」がさらに加速することが予想される。そして真剣に取り組む企業が増えることで、実際に成功する企業が増える流れが生まれるのではないだろうか。

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製造業における非製造業事業を手掛ける企業の比率(クリックで拡大)出典:2019年版ものづくり白書

⇒「MONOist 新年展望」記事はこちら

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