航空機メーカーの製造プロセス支援ソリューションを設計:製造IT導入事例
富士通とSAPジャパンは、川崎重工業の航空機設計、製造プロセスの効率化を支援するソリューション「SAP S/4HANA Manufacturing for Production Engineering and Operations」を設計した。紙文書と業務プロセスを電子化し、業務を効率化する。
富士通とSAPジャパンは2019年12月5日、川崎重工業航空宇宙システムカンパニーの航空機設計、製造プロセスの効率化を支援するソリューション「SAP S/4HANA Manufacturing for Production Engineering and Operations」を設計したと発表した。紙文書と業務プロセスの電子化により、トレーサビリティを詳細化し、業務を効率化する。本稼働は2020年7月を予定する。
SAP S/4HANA Manufacturing for Production Engineering and Operationsは、「SAP S/4HANA」の拡張生産管理だ。航空宇宙産業など、大規模かつ複雑な組み立て製造業で必要とされる設計BOM(部品表や部品構成表)と製造BOMのシームレスな連携機能を持つ。
航空機機体の設計BOMと製造BOMを一元管理し、設計時の変更情報を設計BOMから製造BOMへスムーズに反映する。これにより、急な設計変更が発生した場合でも製造現場へ正確に要求を伝達でき、製造開始の遅延や手戻りを防止する。
また、製造現場での作業を細かいレベルまで管理できるため、各工程の作業時間や使用した部材などの製造記など実績情報を詳細に収集できる。
これらの実績情報と製造BOMや作業手順などの指示情報との相互参照により、トレーサビリティを詳細化。同時に膨大な部品に関する製造情報を電子化し、業務の効率化と顧客からの情報開示要求への迅速な対応による信頼性向上につなげる。
さらに、製造現場の作業担当者が行う作業情報の確認や作業記録を入力するタブレット端末向け画面に、富士通は独自のUXデザインアプローチを活用したアドオン機能を開発。また、作業計画者向けに作業員ごとの複数パターンの作業計画を効率的に立案する機能など、川崎重工の生産ノウハウを活用したアドオン機能も開発した。
関連記事
- 5分で分かるIoT時代のデジタル製造
IoT時代を迎えて製造業のためのITツールもその役割を変えつつある。本連載では、製造ITツールのカテゴリーごとに焦点を当て、今までの役割に対して、これからの役割がどうなっていくかを解説する。第3回はCAMをはじめとするデジタルマニュファクチュアリング(デジタル製造)のツールを取り上げる。 - シームレスな“モノづくり基盤”実現へ、設計と生産の結び目にまで踏み込むSAP
ドイツのSAPは、ハノーバーメッセ2019(2019年4月1〜5日、ドイツ・ハノーバーメッセ)において、「マスカスタマイゼーション」を実現するモノづくりの一連のフローをブース内に再現。同社のソリューションがこれらの工程を総合的に支援できるという点を訴えた。また、欧州で旭化成が取り組み、SAPが支援に入る、水素サプライチェーンインフラ構築への取り組みを事例として紹介した。 - デジタルツインによる生産準備「バーチャルコミッション」とは
製造業に大きな進歩をもたらすデジタルツインの姿について事例から学ぶ本連載。第2回は、生産準備工程におけるデジタルツインに着目する。 - NTKが「Windchill」と「Creo」を導入、設計情報管理を紙から3Dへ
PTCのライフサイクル管理ソフト「Windchill」と3D CADソフト「Creo」を、日本特殊陶業が採用した。導入により、3D中心で設計情報を管理運用できるようになり、設計と営業間のタイムリーな情報交換が可能になったことで、営業効率も向上した。 - デジタル製造は既存技術の組み合わせで、SAPがマスカスタマイゼーションを訴求
SAPはハノーバーメッセ2018に出展し、「Shared Intelligence」をテーマに、設計から製造、アフターサービスまで製品ライフサイクル全てをデジタル化することで得られる柔軟性を訴求。あらためて「情報共有の価値」について紹介した。 - アズビルが設計開発力の強化を目指し、PLMシステムを導入
新日鉄住金ソリューションズは、アズビル向けにPLMシステムを構築した。アズビルでは、全社標準の設計開発基盤が整ったことで組織間での人材流動性が高まり、開発支援体制が強化された。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.