協働ロボット市場は第2フェーズに、URの“次の一手”とは:協働ロボット(3/3 ページ)
デンマークのUniversal Robots(ユニバーサルロボット、以下UR)は2019年12月17日、事業戦略の説明を行い、プロダクトおよびテクノロジーベースでの提案から、ソリューションおよびアプリケーションベースでの提案に大きくかじを切る方針を示した。本稿では会見の内容と、UR社長のユルゲン・フォン・ホーレン氏へのインタビューの内容を紹介する。
URエコシステムによるアプリケーション提案
MONOist アプリケーション提案を強化するとしていますが、具体的にはどういう取り組みを進めていくつもりですか。
ホーレン氏 協働ロボットへの参入も非常に多くなってきている中で、あらためてロボットの必要性が問われている。「ロボットを使う意義」にフォーカスすると、ユーザーは何らかの課題解決のためにロボットを使いたいというところに行き着く。URは非常にシンプルで誰でも簡単に使える協働ロボットではあるが、生産現場の課題解決という視点で見た場合、単体で解決できることはない。ハンドやセンサーなど周辺の機器やソフトウェアなどと組み合わせて初めて価値を生む。こうした価値に直結するような提案に注力していくというのが2019年からの取り組みだ。
この取り組みの土台となるのが「UR+」である。「UR+」には現在、ハンドやビジョン、センサーなどの企業が400社以上参加しているが、今後はターゲットとするアプリケーションを絞り込み、それに合わせて必要な企業の参加を呼びかけ、「UR+」内でアプリケーションが完結するような取り組みを進めていく。また「UR+」内で1つの統合したパッケージとする提案なども行い、エンドユーザーやシステムインテグレーターが、協働ロボットを組み込んだ生産ラインやシステムを構築する負荷を低減することを目指している。もっと簡単に短期にプロセス改善ができるような仕組みを構築していく。
MONOist PCを購入するように選択肢を選んでいくだけで最適なアプリケーションが導入できるというような世界を目指しているのでしょうか。
ホーレン氏 例えとしては面白いが、現段階での適切な解は分からないというのが正直なところだ。何よりもまだアーリーステージで、市場がどのように動いていくのかを完璧に把握するのは不可能だ。ビジネスモデルそのものはオープンなので、さまざまな可能性があるが、とにかく、従来は製品ベースでプッシュ型の展開をしてきたのを、市場の声を聞いて要望に合わせたソリューションを提供するプル型へと切り替えていくというのが大きな変化だ。
異なる武器で2つの競合に対峙
MONOist 競合関係も厳しくなっていると思いますが、その点はどう考えますか。
ホーレン氏 現状では主に2つの競合グループがあると考えている。1つは従来型のロボットメーカーが協働ロボットに参入してくるケースだ。もう1つが協働ロボット専業のスタートアップである。
ロボットメーカーに対しては、協働ロボット専業であるという強みを差異化のポイントとして押し出す。従来型の産業用ロボットの市場に比べると、協働ロボットの市場はまだまだ非常に小さく、ロボットメーカーはその小さい市場に対して大きなリソースをかけることが難しい状況にある。ビジネスモデルそのものが従来型とは異なっており、「UR+」のようなエコシステムなどもそう簡単には構築できない。従来型のロボット市場では満たせなかったニーズや特徴を訴えていく。
一方でスタートアップに対しては、ファーストムーバーとしての利点を打ち出していく。既に1100社に広がったエコシステムや3万9000台に及ぶ実績を生かし、これらをベースに差異化を図っていく。
MONOist 中堅中小企業への導入を訴えていくと話していましたが、中堅中小企業にとっては「協働ロボットは高い」という声もよく聞きます。さらに安いモデルを出す考えはありますか。
ホーレン氏 ロボットの価格が重要ではない。中堅中小企業はロボット技術や自動化技術への知識やリソースが不足しているケースが多く、その点でのビジネスバリューの描き方を啓蒙していくということが根本的な解決につながると考えている。製造において課題とするものがあり、そこでの工数や負荷などが存在する。それを解決すれば、どういう付加価値があるのか。リターンがどれくらいあれば、どれくらいの投資であれば、容認できるのかなど、ビジネスバリューを起点とすれば、さまざまな可能性が考えられる。ロボットをコストとして考えるのではなくて、バリューとして考えてもらえるような提案を進めていく。そうすると、ロボットの利用がはまる領域とそうではない領域が見えてくる。そういう提案を進めていく。
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