トラック、倉庫、1次産業で冷やす技術の需要拡大、パナソニックは中国で売上3倍に:物流のスマート化(2/2 ページ)
パナソニックは2025年に向けて、冷蔵ショーケースや冷凍システムを扱うコールドチェーン(低温流通)事業の売上高を中国で倍増させる。これまでは店舗向けの冷蔵ショーケースが事業の主体だったが、産地での収穫直後の冷蔵保管、低温物流、冷蔵ロッカーで中国の事業規模を拡大する。
中国自動車メーカーと協力してトラックの冷蔵コンテナ開発
こうした状況を受けて、現地資本の自動車メーカーと協力して、少ないエネルギーで効率的に冷やすコンテナの開発を進めている。「われわれは真空断熱材を中国の重慶で生産しており、社内の技術を組み合わせて役立てる」(横尾氏)と自信を見せる。
ただ、中小企業が大多数ということは、経済的な理由で冷蔵車、冷凍車が導入されにくいという意味でもある。「そんな高いトラックは必要ないという会社が多い。ある物流事業者の冷凍車をモニタリングさせてもらうと、燃費が悪くなるからといって冷凍機のスイッチが途中で切られていることが分かった。燃料コストは物流事業者の負担になるからだ。車両の省エネ化に加えて、食品輸送の温度管理に対する規制や補助金など政策で環境が変わるだろう。リース販売が普及すれば、それも後押しになるのではないか」(横尾氏)。
生鮮食品のサプライチェーンの起点である1次産業に向けては、「産地予冷」の移動式コンテナを展開中だ。農家が農産物を収穫して冷凍機付きのコンテナに入れ、冷やした状態でトラックに載せて物流拠点へ運ぶというものだ。
生鮮食品が家庭に届くまでの変化にも対応する。インターネットから注文を受けて生鮮食品を販売する業態が拡大することで、都合のいい場所、タイミングで購入した生鮮食品を受け取りたいユーザーが増える。これに合わせて、冷蔵対応のスマートロッカーの設置が進むという。
現地での素早い意思決定が必要
パナソニックは、コールドチェーン事業を中国だけでなく、日本やタイなどでも展開している。中国では、冷蔵ショーケースを手掛ける松下冷鏈(大連)と、冷凍機の松下冷機系統の2社がそれぞれ開発、生産、販売を行っている。
従来は日本主導で中国を含む海外事業をマネジメントしていたが、中国には特有の課題や市場環境があり、小売りにIT大手が関与しており変化も速いため、今後の成長には現地での意思決定が必要だと判断。2019年4月から中国の地域カンパニーである中国・北東アジア社の下に移った。中国・北東アジア社では、コールドチェーンを家電や住空間に並ぶ重点事業と位置付けている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 自動運転車や電動車を買うメリットはあるか、商用車で問われる“事業化”
商用車には“事業化”の視点が重要――。自動運転車や電動車を普及させる時、商用車で特に重視されるのが、事業化だ。商用車メーカーにとって収益性が確保できるかではなく、トラックやバスのユーザーにとって自動運転車や電動車を使うことが事業面でプラスになるかどうかが問われる。 - EV化進む小型トラック、プラットフォームはEV専用? 既存モデルと共通?
「人とくるまのテクノロジー展2018」に出展した商用車メーカーに小型電動トラック開発の取り組みを聞いた。 - ベンチャーの駆動系にエアレスタイヤ、3Dプリントシャシー、未来のトラックの形は
日野自動車はモビリティプラットフォーム「Flat Former(フラットフォーマー)」を「第46回東京モーターショー2019」(会期:2019年10月24日〜11月4日、東京ビッグサイト他)で披露した。現時点では実際に動く車両ではないが、将来的に実現可能性の高い技術を取り入れて未来のトラックの形を示した。 - “冷やす”を「コト売り」に、パナソニックが冷凍機のサービス化で得たもの
パナソニック産機システムズは、IoTを活用した冷凍機システムにより、サービス化への取り組みを進めている。「モノ」から「コト」へのビジネスモデル変革で、どういう効果があり、どういう難しさがあるのだろうか。 - イオンモールがスマート化、「快適なカスタマージャーニー」をどう実現するのか
イオンモールは、「イオンモール幕張新都心」をパイロット店舗として、さまざまなデジタル機器を活用してショッピングセンターをスマート化する「スマートモール」の取り組みを進めている。この“スマート・イオンモール”の実証で効果を確認できたサービスは、順次国内で展開を広げていく方針だ。 - 大型トラックに“元を取れる”ハイブリッドモデル、高速道路での燃費を改善
日野自動車は2018年7月17日、同社羽村工場で説明会を開き、2019年夏に大型トラック「プロフィア」のハイブリッドモデルを発売すると発表した。高速道路が大半のルートで走行しても、ディーゼルエンジンモデルと比較して燃費値を15%改善できる。商用車の中でも燃料の消費量が多い大型トラックの燃費を向上させることにより、商用車全体のCO2排出量削減につなげる。 - カーエアコンの冷房はなぜ冷えるのか(前編)
夏場のドライブで大活躍するカーエアコンの冷房機能。一体どういう仕組みで冷やすことができるのか前後編に分けて紹介する。前編で説明するのは、冷房機能に必要不可欠な冷媒と、冷媒を使って冷やすための冷凍サイクルの全体像についてだ。