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自動運転車や電動車を買うメリットはあるか、商用車で問われる“事業化”エコカー技術(1/2 ページ)

商用車には“事業化”の視点が重要――。自動運転車や電動車を普及させる時、商用車で特に重視されるのが、事業化だ。商用車メーカーにとって収益性が確保できるかではなく、トラックやバスのユーザーにとって自動運転車や電動車を使うことが事業面でプラスになるかどうかが問われる。

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 商用車には“事業化”の視点が重要――。自動運転車や電動車を普及させる時、商用車で特に重視されるのが、事業化だ。商用車メーカーにとって収益性が確保できるかではなく、トラックやバスのユーザーにとって自動運転車や電動車を使うことが事業面でプラスになるかどうかが問われる。

 経済産業省の「自動車新時代戦略会議」では、商用車でも電動化を進めるにあたって、従来と同等の使い勝手や経済優位性の確保に関して利用者から要請が強いと想定する。そのため、車両の環境性能を向上させるだけでなく、社会システムとして総合的にヒトやモノの流れを効率化することも必要だとしている。

 商用車メーカー同士の連携も不可欠だ。トラック、バスのユーザーは、複数メーカーの車両を所有するため、「日野のクルマではできるけど他社のクルマではできない、他社のクルマではできるのに日野はできない、という状況では使い勝手の面でマイナスだ。メーカー間の差をなくすことも必要になる」(日野自動車)。

元が取れる電動車も出てきたが


2019年夏に発売する「プロフィア」のハイブリッドモデルはリチウムイオン電池を採用する(クリックして拡大)

 商用車の事業化の1つとして、クルマを導入してユーザーが元を取れるかどうかという点がある。例えば乗用車に関して、車両価格と燃費、走行距離を勘案すると、ハイブリッド車(HV)は元を取れる使い方が限られるという議論がある。商用車は言わずもがなで、特に大型トラックは高速道路を使った都市間の輸送が多く、市街地のように発進、停止が少ないため、ハイブリッドシステムの燃費改善効果が発揮されにくい。

 日野自動車は、高速道路に勾配が多いことを利用して下り坂でエネルギーを回生し、モーターのみでの高速定常走行(EV走行)や高負荷時の駆動力のアシストが可能なハイブリッドシステムを開発した。2019年夏に大型トラック「プロフィア」にハイブリッドモデルを追加して発売する。積載量の確保と重量のある駆動用バッテリーの搭載を両立するため、地形情報を基にバッテリーの充放電を制御する技術も採用する。車両価格は通常の非ハイブリッドモデルよりも高くなるものの、「普通に走れば元を取れる」(日野自動車)と想定している。

 大型トラックはハイブリッド化が難航してきた一方、小型トラックは1日の走行距離やルートが一定のため、現時点では満充電からの走行距離に課題がある電気自動車(EV)でも導入しやすい。また、走行距離は100kmで十分という使い方も見えており、乗用車のように駆動用バッテリーの搭載量を増やしてでも走行距離を伸ばす必要性もあまりない。

 三菱ふそうトラック・バスは「eCanter」を量産中で、セブン‐イレブン・ジャパンや米国の貨物輸送会社ユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)への納入が決まっている。いすゞ自動車は2018年内に「ELF EV」をモニター向けに出荷する。

日野自動車が開発中の小型電動トラックは従来の小型トラックとは異なるFF低床プラットフォームが特徴(左)。三菱ふそうトラック・バスは「eCanter」を量産中だ(右)(クリックして拡大)

 小型電動トラックの特徴として、架装部分を駆動用バッテリーの電力で駆動することで、信号待ちなど停止中もバンの中を冷やしたり、住宅地で静かにごみを収集したりできることが挙げられている。しかし、ユーザーが小型電動トラックへ積極的に置き換えるための動機付けは、環境性能以外には見えにくいままだ。

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