自動運転車や電動車を買うメリットはあるか、商用車で問われる“事業化”:エコカー技術(2/2 ページ)
商用車には“事業化”の視点が重要――。自動運転車や電動車を普及させる時、商用車で特に重視されるのが、事業化だ。商用車メーカーにとって収益性が確保できるかではなく、トラックやバスのユーザーにとって自動運転車や電動車を使うことが事業面でプラスになるかどうかが問われる。
自動運転は協力があってこそ
事業化だけでなく、電動車や自動運転車の効率的な開発も課題となる。
電動化に関しては、現時点でも、既存モデルの部品を流用して、開発の効率化や信頼性の確保を狙った商用車が世に出ている。トヨタ自動車の燃料電池バス「SORA」は、当初から乗用車タイプの燃料電池車「MIRAI」の基幹部品を有効活用する前提で開発が始まった。また、SORAでは駆動用バッテリーは「クラウン」、駆動用モーターは「レクサス RX」と共通となっている。日野自動車も同様に、全ての電動パワートレインで駆動用モーターとバッテリー、インバーターなどを共通化して次世代の電動車を開発する考えだ。
自動運転技術に関しては、商用車特有の課題がある。商用車は車体の大きさから、センサーやカメラ、V2Xのためのアンテナが多く必要になる。また、車線の幅員に余裕がないことから高精度な車両の制御が要求される。車両重量が大きいことから、急停止や急なステアリング操作も難しい。
こうした課題に対し、国内商用車メーカー4社が協力した取り組みも進んでいる。車車間通信を使ったACC(アダプティブクルーズコントロール)や車線維持支援など複数の制御技術を融合する隊列走行では、4社が協力して公道実証実験を行った。また、経済産業省と国土交通省は、2020年にも新東名高速道路で後続車両が無人の状態での隊列走行を実現する計画だ。
また、トラックやバスの量産モデル向けのITS(高度道路交通システム)技術や高度運転支援システム(ADAS)でも協力が進んでおり、いすゞ自動車と日野自動車は、2018年度から共同開発したITS技術やADASを製品に採用していく。バス停の路肩に隙間なくバスを寄せて停車する「プラットフォーム正着制御」は、東京オリンピック・パラリンピックに合わせた運用を前提に、路面に引いた専用の誘導線をカメラで認識するシンプルなシステムを開発した。専用の誘導線なしにセンサーで路肩を検出するシステムの研究も進めている。
自動運転技術や電動化だけでなく、内燃機関の改善など開発課題が多岐にわたる中、国を超えた協業も生まれている。日野自動車はVolkswagenグループの商用車ブランドを統括するVolkswagen Truck & Busと業務提携を発表。技術開発では、ディーゼルエンジン、ハイブリッドシステム、電動化、コネクティビティ、自動運転技術といった既存の分野から新技術まで広く協力する方針だ。
トヨタ自動車の資本が抜けたいすゞ自動車は、アライアンスの自由度が上がったことを生かして社外との提携を模索する。日野自動車との協業も維持する。「環境規制の強化で開発負荷が増えており、既存技術と先行投資の両方が負担となっている。会社の規模に関係なく負担となる。商用車は乗用車とボリュームが異なるので、アライアンスは避けられないだろうと認識している」(いすゞ自動車)。
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