ドライバー急病時に大型バスを自動停止、日野が2018年夏から標準装備に:自動運転技術
日野自動車はドライバー異常時対応システムを2018年夏から大型観光バス「セレガ」に標準搭載する。ドライバーの急病などを原因とする事故で被害を最小限にとどめるため、異常発生後にいち早く車両を停止させる。
日野自動車は2018年5月21日、同社の羽村工場(東京都羽村市)で技術説明会を開き、ドライバー異常時対応システムを2018年夏から大型観光バス「セレガ」に標準搭載すると発表した。ドライバーの急病などを原因とする事故では、車両がコントロールを失ったまま走行を続けて乗員が死傷し得るだけでなく、対向車線への逸脱やガードレールへの衝突など2次被害も発生する可能性がある。被害を最小限にとどめるため、異常発生後にいち早く車両を停止させる。
ドライバーが体調不良などで運転を継続できない時、乗員もしくはドライバー本人がスイッチを押すと、ハザードやホーンで後続車両などに異常を知らせながら自動で停止する。国土交通省が策定した「ドライバー異常時対応システム」の技術指針に準拠した。ドライバー異常時対応システムを商用車として製品化するのは「世界初」(日野自動車)だとしている。
路肩への自動退避に向けた一歩
セレガに搭載するドライバー異常時対応システムは、運転席もしくは客席からスイッチを操作することで作動する機能だ。運転席のスイッチが押されると、ハザードランプやストップランプ、ホーンで周囲に異常を知らせながら2.45m/s2で減速する。車内の乗客向けにも非常ブザーや赤色フラッシャーで同様に警告する。客席でスイッチが操作されると、誤操作の場合に運転席からシステムを解除できるようにするため、スイッチが押されてから3.2秒後に車内外に異常を知らせ、減速を開始する。
緊急自動ブレーキはドライバー異常時対応システムよりも優先して動作する。そのため、ドライバーの異常時に前走車両と衝突する可能性がある場合は緊急自動ブレーキが作動する。
スイッチを操作して作動する今回のドライバー異常時対応システムは、ドライバー以外の乗務員や乗客が操作するため、バスでの搭載を前提としている。ドライバーが一人で乗車することの多いトラックでは、ドライバーの異常を自動的に検知して減速、停止するシステムを導入する方針だ。ドライバーの異常を自動的に検知する上では、ドライバーの表情や様子をセンシングした結果や、通常行われるはずの運転操作が行われないなどの情報を基にする。
日野自動車は、ドライバー異常時対応システムを自動運転につながる運転支援技術の1つと位置付け、自動ブレーキに操舵(そうだ)の制御を組み合わせて段階的に高度化していく。今回発表したスイッチを操作するタイプは第1段階とし、ドライバーの異常を自動で検知するタイプ、次に車線内の走行を維持しながら停止するタイプを市場投入。最終的には周囲の安全を確認しながら路肩に退避して停止するタイプを製品化する。
車線維持支援技術とドライバー異常時対応システムを組み合わせて車線内の走行を維持して停止するのは、ガードレールなどとの衝突や対向車線への逸脱を防ぐためだ。また、テストコースでは路肩に退避して停止する段階まで実現しているが、周囲の車両を検知しながら車線変更する必要があるため、製品化には時間がかかるという。
日野自動車ではこの他にも、全車速対応のACC(アダプティブクルーズコントロール)や車車間通信で前走車両の加減速の情報を得る協調型ACC、車線維持支援、周辺監視システムと言った乗用車にもある先進運転支援システム(ADAS)の他、トラックの隊列走行やBRT(バス・ラピッド・トランジット、バスによる高速輸送システム)といった技術を完全自動運転に向けて高度化していく。
日野自動車は2018年4月にVolkswagenグループの商用車ブランドを統括するVolkswagen Truck & Busと協業を発表したばかり。ADASや自動運転技術の開発での協力については現在検討中だとし、技術説明会の場では具体的な役割分担に言及しなかった。
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