イオンモールがスマート化、「快適なカスタマージャーニー」をどう実現するのか:スマートリテール(1/3 ページ)
イオンモールは、「イオンモール幕張新都心」をパイロット店舗として、さまざまなデジタル機器を活用してショッピングセンターをスマート化する「スマートモール」の取り組みを進めている。この“スマート・イオンモール”の実証で効果を確認できたサービスは、順次国内で展開を広げていく方針だ。
イオングループでショッピングセンター事業を展開するイオンモールは2019年11月11日、同社の旗艦店である「イオンモール幕張新都心」(千葉市美浜区)で記者会見を開き、さまざまなデジタル機器を活用してショッピングセンターをスマート化する「スマートモール」の取り組みについて説明した。同年11月から、同店をパイロット店舗とした“スマート・イオンモール”の実証を開始しており、有意な効果を確認できたサービスについては、順次国内で展開を広げていく方針だ。
イオンモールは2018年4月、営業本部の傘下にデジタル推進統括部を新設。同統括部により、顧客の消費環境変化やデジタル化の進展に対応し、幅広い世代の顧客の来店動機創出と買い物環境の向上につながるスマートモールを国内外で推進してきた。同社 取締役で営業本部 デジタル推進統括部長を務める伴井明子氏は「大きく変化する小売市場に対応するため、中国やアセアンの店舗を中心にデジタル技術の導入について効果測定や検討を進めてきた。国内市場では、ここイオンモール幕張新都心において、5つの価値を実現するスマート・イオンモールに向けた実証を進めていきたい」と語る。
伴井氏の掲げる5つの価値とは「ストレスフリー」「コンビニエンス」「情報発信力」「インバウンド対応」「省人化」である。「あらゆるデジタル技術を駆使して、幅広い世代の来店動機の創出と体験としての買い物環境の向上につながる『快適なカスタマージャーニー』を実現していく」(同氏)という。
「小型AIインフォメーション」の結果から「お買い物ナビ」の開発へ
今回、イオンモール幕張新都心に導入されたスマートモールのサービスは「ストレスフリー」が2つ、「コンビニエンス」が3つ、「情報発信力」が2つ、「インバウンド対応」が2つ、「省人化」が1つの計10個となっている。会見では、これらのうち新規性の高い取り組みについて、店舗内における実地デモンストレーションを含めて披露された。
「ストレスフリー」で導入されたのが、タブレット端末とマイクを用いる小型案内システムの「小型AIインフォメーション」と、タブレット端末でモール内の各専門店のさまざまな商品を検索できるタブレット端末「お買い物ナビ」の2つである。
まず、先行して導入されたのが、タケロボと共同開発した小型AIインフォメーションである。イオンモール幕張新都心では2019年5月から5台が稼働している。モール内には。さまざまな問い合わせに対応するためのインフォメーションコーナーがあるが「わざわざインフォメーションへ行かなくても、これに話しかけるだけでモール内の施設や専門店を案内してくれる」(伴井氏)。
2019年5〜8月の稼働実績では、1日につき1台当たり30〜40件の利用があった。5台分を合計した150〜200件は、有人のインフォメーションコーナーへの問い合わせの約半分くらいになる。そして、その稼働実績からは、当初多いと想定していた施設案内は約20%と比較的少なく、一番多かったのはファッションやグッズ、サービスといった専門店の検索が74%を占めた。また、専門店検索で最も多かったのが、靴、バッグ、ゲームなどだった。
伴井氏は「小型AIインフォメーションの利用実績から、館内の1カ所で目的の商品を検索したい、その場で商品や価格を比較したいというニーズがあるのではないかと考えた。そこで開発することにしたのがお買い物ナビだ」と説明する。
お買い物ナビは、館内の専門店を横断して商品検索を行えるシステムだ。商品カテゴリーやフリーワードによる検索の他、絞り込み、画像検索、セール情報の検索も行えるようになっている。
お買い物ナビの共同開発パートナーとなったのは日立製作所だ。お買い物ナビのような検索システムでは、検索対象となるデータの入力が重要になる。しかし、イオンモール幕張新都心の各専門店が商品データを手作業で入力するのは大変な労力になるし、新商品や新色の追加などに逐次対応するのも難しい。お買い物ナビでは、専門店の運営企業が独自に展開するEC(Eコマース)サイトから、商品の画像、概要、価格などの各種情報を自動収集することで、館内に入居する各専門店が扱う商品データベースを構築。専用のタブレット端末から、この商品データベースを基にした検索を行えるようにした。
日立製作所 執行役常務 産業・流通ビジネスユニット マネージングダイレクタの貫井清一郎氏は「日立の研究所組織で開発していたAI画像検索技術を活用することで、2カ月弱で実稼働できるところまで開発を進められた。専門店の運営企業ごとに異なるECサイトに最適化するところが課題だったが、約1カ月で解決できたことも大きい」と強調する。
イオンモール幕張新都心に設置されたお買い物ナビは、カバンと靴を検索対象にしたシステムとなっている。これは小型AIインフォメーションの稼働実績が反映されている。一方、2019年11月20日からお買い物ナビを導入するイオンレイクタウン(埼玉県越谷市)では、アパレル商品を検索対象とする予定。実証実験の期間は、イオンモール幕張新都心が同年11月1日〜12月26日、イオンレイクタウンが11月20日〜12月26日となっている。
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