検索
ニュース

イオンモールがスマート化、「快適なカスタマージャーニー」をどう実現するのかスマートリテール(2/3 ページ)

イオンモールは、「イオンモール幕張新都心」をパイロット店舗として、さまざまなデジタル機器を活用してショッピングセンターをスマート化する「スマートモール」の取り組みを進めている。この“スマート・イオンモール”の実証で効果を確認できたサービスは、順次国内で展開を広げていく方針だ。

Share
Tweet
LINE
Hatena

高齢者向けの「ショッピングモビリティ」を開発

 「コンビニエンス」では、高齢者が館内を快適に移動するための「ショッピングモビリティ」を用意した。

ショッピングモビリティに乗車する様子
ショッピングモビリティに乗車する様子(クリックで拡大)

 イオンモール幕張新都心のような大型ショッピングセンターは、高齢者にとって移動負担が大きい。そこで、キュリオの福祉車両をベースに、イオンモールと菊池製作所で新たな電動モビリティを開発した。大きな荷物を入れられるカゴを車両前方に設置し、高齢者が安心して操作できるハンドル設計、長時間乗っても疲れにくいクッション性の高いシート、買い物袋などを掛けるためのフック、つえの置き場所など、さまざまな工夫を凝らした。走行速度は最高時速4kmで、サイズも含めて電動車いすの規定に収まるように設計されている。

 イオンモール幕張新都心では、2019年10月7日から約1カ月間、利用者の年齢を限定せずに実証実験を実施した。その結果、やはり利用者は65〜74歳の世代に集中したという。利用者からのアンケート結果も良好だったため、同年11月からは60歳以上限定で本格稼働に入っている。なお、運用時間帯は平日の10〜17時までとなっているが、これは混雑時間帯を避けるためだ。「ぜひ平日デイタイムのシニア層のショッピングでご利用いただきたい」(イオンモールの説明員)。

 現在、ショッピングモビリティの台数は10台だが、2020年1月からは20台に増やす計画。ほぼ同時期に、イオンレイクタウンにも20〜30台を導入する予定だ。

イオンモール幕張新都心の1階に並べられたショッピングモビリティ
イオンモール幕張新都心の1階に並べられたショッピングモビリティ(クリックで拡大)

 この他「コンビニエンス」では、スマートフォン用のモバイルバッテリーをレンタルと返却ができる「Charge SPOT」(インフォリッチ製)も設置する。イオンモール幕張新都心では5カ所に設置し、今後の利用状況を確かめていく。「中国では既に当たり前の設備になっている。海外で当たり前の設備を国内で使えるようにするという意味では『インバウンド対応』ともいえるだろう」(イオンモールの説明員)。

イオンモール幕張新都心に設置された「Charge SPOT」
イオンモール幕張新都心に設置された「Charge SPOT」。スマートフォンアプリでレンタルを申し込むと、装置の横側に組み込まれているモバイルバッテリーを取り出せる(クリックで拡大)

透明LED付きフィルム、採用の決め手は“抜け感”

 「情報発信力」では、韓国のLEON KOREAと共同開発した透明LED付きフィルムをサイネージとして活用する「両面シースルー天吊りバナー」と「片面シースルーLEDフィルム」を導入した。

 これまで、館内の吹き抜け部にある天吊りバナーやガラス壁を使ったプロモーションは、表示内容をデジタルに変更できるサイネージではなく、紙や樹脂シートに印刷したものを使用するのが一般的だった。今回、採用に決め手になったのは、透明LED付きフィルムの“抜け感”と大幅な薄型化と軽量化だ。例えば、吹き抜け部のガラス壁に片面シースルーLEDフィルムを設置する場合、吹き抜け部側から見るとサイネージが表示される一方で、その裏側の通路はガラスの向こう側をある程度見通せるようになっている。

吹き抜け部のガラス壁に設置した透明LED付きフィルム裏側から見ると透明 吹き抜け部のガラス壁に設置した透明LED付きフィルムによるプロモーション(左)。裏側から見ると透明になっている(右)(クリックで拡大)

 表面と裏面で異なるサイネージを表示できる両面シースルー天吊りバナーでは、薄型化と軽量化が大きく貢献した。イオンモール幕張新都心のような既存のモールの場合、天吊りバナーを設置する天井部の耐荷重は200kgが一般的だ。これまで、サイネージを表示できる天吊りバナーは片面で100kg、両面表示だと200kgとなり、耐荷重ギリギリになってしまう。これに対して、透明LED付きフィルムを用いた両面シースルー天吊りバナーの重量は100kgであり、両面表示が可能でありながら耐荷重の問題をクリアしている。

両面シースルー天吊りバナーの表面両面シースルー天吊りバナーの裏面横から見るとかなり薄い 両面シースルー天吊りバナーの表面(左)と裏面(中央)。横から見るとかなり薄いことが分かる(右)(クリックで拡大)

 これまでプロモーション内容を変更するには、貼り替えや架け替えのための人手作業が必要だったが、デジタルサイネージ化により不要になる。また、災害時などに表示内容を変更できる点も大きなメリットになるという。

 これらの透明LED付きフィルムを用いたプロモーションは、2019年11月11日からイオンモール幕張新都心の館内で稼働しており、2020年3月以降には活性化を目指すモールへ導入を広げる予定だ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る