ニュース
単一素材から多様な触感を表現するデータ設計技術を開発:3Dプリンタニュース
慶應義塾大学SFC研究所は、3Dプリンタを用いて触感、通気性、重量を自在に変化させられる単位格子と、それを連続的に分布させ、形状内部に配置できるデータ設計技術を開発した。
慶應義塾大学SFC研究所は2019年12月2日、JSRとの共同研究で、3Dプリンタを用いて触感、通気性、重量を自在に変化させられる単位格子と、それを連続的に分布させ、形状内部に配置できるデータ設計技術を開発したと発表した。本成果は、同大学環境情報学部 教授の田中浩也氏らの研究グループによるものだ。
今回の研究開発では、単位格子を3Dラティス構造で構成。これにより、単一素材から硬さや柔らかさといった任意の触感、通気性、重さなどを作り出せるようになった。また、ソフトウェア上で単位格子を少しずつ変化させながら連続的に分布させることで、さまざまな触感が部位ごとに配置された製品を作れる。
従来、複数の触感や機能を1つのものの中で組み合わせようとすると、部位ごとに異なる材料で製作し組み立てる必要があった。また、廃棄の際に分別が必要となるといった課題もあった。本技術を用いることで、単一素材でありながら異なる触感と機能が分布する製品を一体で製作可能だ。その結果、組み立てが不要になるだけではなく、材料リサイクルも容易になる。
同成果と、過去に研究開発した身体の形に合わせた形状の作成を支援する3Dデータ処理技術を組み合わせることで、義肢装具などの身体にフィットする製品を製作できる。今後は、JSRと医療用インソールへの応用に向けた研究開発を進めていくとしている。
関連記事
- ブリヂストンが3Dプリント製コンセプトタイヤを提案、新素材「SUSYM」で実現
ブリヂストンは「第46回東京モーターショー2019」に出展し、ゴムと樹脂を分子レベルで結び付けた「世界初」(同社)をうたうポリマー「SUSYM(サシム)」を用いた3Dプリント製コンセプトタイヤを参考出品した。 - 「FAV」が仕様拡張、3Dプリント以外のさまざまな3次元情報も扱えるように
富士ゼロックスと慶應義塾大学SFC研究所ソーシャルファブリケーションラボは、3Dプリント用データフォーマット「FAV(FAbricatable Voxel)」の仕様を拡張し、デジタルモノづくりを支える3Dデータ基盤として構築したことを発表した。 - 複雑な情報を保持する3Dプリント用データフォーマットの仕様を公開
富士ゼロックスと慶應義塾大学SFC研究所は、物質の内部構造/色/材料/接合強度などまでを含めた3次元の複雑な情報を保持する3Dプリント用データフォーマット「FAV」を共同で研究し、仕様を公開した。 - 「単なる試作機器や製造設備で終わらせないためには?」――今、求められる3Dプリンタの真価と進化
作られるモノ(対象)のイメージを変えないまま、従来通り、試作機器や製造設備として使っているだけでは、3Dプリンタの可能性はこれ以上広がらない。特に“カタチ”のプリントだけでなく、ITとも連動する“機能”のプリントへ歩みを進めなければ先はない。3Dプリンタブームが落ち着きを見せ、一般消費者も過度な期待から冷静な目で今後の動向を見守っている。こうした現状の中、慶應義塾大学 環境情報学部 准教授の田中浩也氏は、3Dプリンタ/3Dデータの新たな利活用に向けた、次なる取り組みを着々と始めている。 - Carbonが国内初出品の「Smart Part Washer」や3Dプリント技術を活用したサングラスを展示
米国の3DプリンタベンチャーであるCarbon(カーボン)は「CEATEC 2019」(2019年10月15〜18日、千葉県・幕張メッセ)に出展し、造形物の自動洗浄を行う「Smart Part Washer」の実機を国内初出品した。 - アディダスが選んだ量産型3Dプリンタ、日本で本格展開を開始
米国の3DプリンタベンチャーのCarbonは「3D Printing 2018」に出展。引き上げ式の光硬化樹脂型の新方式3Dプリンティング技術「CLIP」を採用した「M2 Printer」の実機を披露し、日本で本格展開する姿勢を示した。【訂正あり】
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.