Carbonが国内初出品の「Smart Part Washer」や3Dプリント技術を活用したサングラスを展示:CEATEC 2019
米国の3DプリンタベンチャーであるCarbon(カーボン)は「CEATEC 2019」(2019年10月15〜18日、千葉県・幕張メッセ)に出展し、造形物の自動洗浄を行う「Smart Part Washer」の実機を国内初出品した。
後処理工程の負荷を軽減する自動洗浄装置を国内初披露
米国の3DプリンタベンチャーであるCarbon(カーボン)は「CEATEC 2019」(2019年10月15〜18日、千葉県・幕張メッセ)に出展し、造形物の自動洗浄を行う「Smart Part Washer」の実機を国内初出品した。既に米国では提供開始しており、今後日本国内での展開を本格化していくという。
展示会場では、同社独自の造形技術「CLIP(Continuous Liquid Interface Production)」を活用したプロセス「DLS (Digital Light Synthesis)」によって造形を行う3Dプリンタ「M2 Printer」も併せて展示。「M2 Printerで造形が完了したらトレー部を取り外し、そのままSmart Part Washerにセットして洗浄を行うことができる。造形品ごとにプロジェクト単位で管理されており、形状や材料などを加味した同一条件で洗浄が行える。また、トレーにはRFIDタグが組み込まれており、トレーサビリティーの確保も可能だ」(JSR Carbon事業推進部 部長 澤田安彦氏)。
従来手作業で行っていた洗浄作業を自動化できるため、後処理工程での負荷を大幅に軽減する。「ユーザーの使用状況にもよるが、ある程度のボリューム(造形数量)が見込める場合は、高い効果を発揮してくれるだろう」と澤田氏。また、M2 Printerと同様に、Smart Part Washerもクラウドに接続されており、稼働状況を24時間365日体制で遠隔監視。異常を検知した際は、迅速なサポートが受けられる。
Smart Part Washerの提供はM2 Printerと同じくサブスクリプション方式で行われ、1台当たり年間435万円で利用できる(M2 Printerは1台当たり年間725万円で利用可能)。「注文をいただければ、すぐに提供できる段階にある」(澤田氏)とのことだ。
これまでにないフィット感とデザイン性を追求した3Dプリンタ製サングラス
さらに、Carbonのブースでは、ジンズのハイエンド層向けアイウェアブランド「J of JINS」での採用事例を紹介。テンプル(メガネのつる)の内側にCarbonの3Dプリント技術を用いて造形されたラティス構造のパーツを採用したサングラス「Neuron4D(ニューロンフォーディー)」を展示していた。装着時に締め付けることなく、頭の形にあわせて変形するとともに高い通気性を確保。ラティス構造は部位ごとに0.1mm単位で硬さを調整し、テンプルエンドに向かうほど柔らかくなる設計になっている。
Carbonの3Dプリント技術で造形したラティス構造のパーツはポリウレタン素材で、テンプル自体は軽量樹脂素材のTR-90を採用、フロントはアセテートをインジェクションで成形したものを用いている。今回Neuron4Dで採用された3Dプリントパーツにより、従来にない快適なフィット感とデザイン性を追求することができたという。
「Carbonはアメリカンフットボール用品メーカーのRiddell(リデル)と協業し、選手一人一人の頭部形状に合わせたカスタムヘルメットを量産した実績もあるため、この技術を応用すればお客さまごとにテンプルの形状をカスタマイズして提供するといったことも可能になるだろう。また、テンプルのクッション部だけではなく、鼻当て(パッド)部分などにも3Dプリント技術が応用できるのではないかと考えている」(ジンズ担当者)という。
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