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第4次産業革命で製造業の取るべき戦略、データサービスと重要部素材のシェア獲得ものづくり白書2019を読み解く(2)(6/6 ページ)

日本のモノづくりの現状を示す「2019年版ものづくり白書」が2019年6月に公開された。本連載では3回にわたって「2019年版ものづくり白書」の内容を掘り下げる。第2回となる今回は、2019年版ものづくり白書が提示する4つの戦略の内、「世界シェアの強み、良質なデータを生かしたニーズ特化型サービスの提供」「第4次産業革命下の重要部素材における世界シェアの獲得」について詳しく掘り下げていきたい。

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部素材産業の主力であるスマートフォン市場は変調

 日本の部素材メーカーが好調な背景には、スマートフォンの爆発的な普及による世界的な特需があるが、世界のスマートフォンの出荷台数は近年一貫して増加していたものの、買い換えサイクルの長期化などにより、2017年以降は前年比で減少となり、成長が鈍化している(図15)。さらに液晶パネルについては、2017年に従来の液晶パネルに代わり有機ELを採用した新型機種が複数登場したことで、スマートフォンの出荷台数の変動以上に落ち込む形となった。(図16)。2019年版ものづくり白書では、これらの影響により、今後は新たな可能性が模索されるとしている。

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図15:世界のスマートフォンの出荷台数(クリックで拡大)出典:2019年版ものづくり白書
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図16:主なスマートフォン関連品目の生産の動向(クリックで拡大)出典:2019年版ものづくり白書

部素材メーカー発の提案力を強化

 IoTが進展する中、さまざまなモノやサービスをつなぐ共通基準としての国際標準の重要性は増している。国際標準には大きく3つの類型があり、1つ目は、ISOやIECなど国際的な標準化機関において、公的で明文化され公開された手続きによって作成される「デジュール標準」、2つ目は技術革新が著しい分野では、複数の企業が市場化前に共同で設計する「フォーラム/コンソーシアム標準」で、3つ目は市場淘汰を通じて事実上の標準規格となる「デファクト標準」である。

 この「デファクト標準」に関し、新興国が急激な技術キャッチアップを見せる中、日本製造業の部素材での強みや、高い技術力・品質力を背景に「他社には作れない」自社製品を事実上の「標準規格」化して高く売る取り組みも現れ始めている。2019年版ものづくり白書では、現状に慢心しない技術力・品質力の飽くなき向上だけでなく、さまざまな完成品の市場動向にも注目し、海外企業を含む完成品メーカーに対しても積極的な提案を行うことが日本の製造企業に求められるとしている。

 第2回では、2019年版ものづくり白書が提示する4つの戦略のうち、「世界シェアの強み、良質なデータを生かしたニーズ特化型サービスの提供」「第4次産業革命下の重要部素材における世界シェアの獲得」について詳しく掘り下げた。第3回では「新たな時代において必要となるスキル人材の確保と組織作り」「技能のデジタル化と徹底的な省力化の実施」について見ていきたい。

≫「ものづくり白書を読み解く」の連載記事一覧

筆者紹介

長島清香(ながしま さやか)

編集者として地域情報誌やIT系Webメディアを手掛けたのち、シンガポールにてビジネス系情報誌の編集者として経験を重ねる。現在はフリーライターとして、モノづくり系情報サイトをはじめ、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。


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