ニュース
プロテインキナーゼNが関与する心不全の新規メカニズムを解明:医療技術ニュース
名古屋大学は、プロテインキナーゼNを除去することで、心不全関連遺伝子の発現が抑えられるという心不全の新たなメカニズムを解明した。今回の研究成果により、心不全の新たな病態解明や治療薬開発につながることが期待される。
名古屋大学は2019年10月23日、プロテインキナーゼN(PKN)が関与する心不全の新規メカニズムを解明したと発表した。この研究成果は、同大学大学院医学系研究科 教授の室原豊明氏らの研究グループによるものだ。
これまでの研究で、低分子量GTP結合タンパク質のRhoAがMRTFA(myocardin-related transcription factor A)を介して、転写因子SRF(serum response factor)を活性化し、心不全関連遺伝子の発現を促進することが報告されている。MRTFAがアクチンというタンパク成分と結合すれば、SRF活性は抑制されるが、その結合に関わる仕組みは明らかにされていなかった。
研究グループはまず、マウスの心不全モデルを作成し、マウスの心筋でPKNが活性化していることを確認した。次にPKNを除去したマウスを作成し、手術で心不全を誘導した結果、心臓の肥大化や線維化が抑制されていた。
また、MRTFAとアクチンの結合部分がPKNによってリン酸化され、結合が阻害されていることも分かった。さらに、PKN除去マウスでは、心不全により促進されたMRTFA/SRF複合体の形成が抑制され、心不全関連遺伝子の発現が抑えられた。
今回の成果から、PKNを治療の標的とすることで、心不全の新たな病態の解明や新規治療薬の開発につながることが期待される。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 心臓の動きを3Dタブレット上でリアルに再現、「Abaqus」の解析技術がベース
ダッソー・システムズは、「第5回 関西 医療機器開発・製造展(MEDIX関西2015)」において、同社が参画する「リビング・ハート・プロジェクト」の成果を披露した。 - 心臓の3次元モデルを“手元に引き寄せて”観察、ダッソーがデモを披露
ダッソー・システムズは「MEDTEC Japan 2014」で、心臓の3次元モデルを観察できるデモを行った。専用のペンを使うと、心臓のモデルを回転させたり、自分の方に“引き寄せて”観察したりできる。 - 心磁図と心臓CT画像の合成により、不整脈の発生部位を高い精度で特定
筑波大学と日立製作所は、心磁図と心臓CT画像の合成技術を用いて、不整脈の発生部位を高い精度で特定できることを明らかにした。治療前に不整脈発生部位を特定できれば、より綿密な治療計画立案が可能になり、患者の負担も軽減する。 - 心・血管修復パッチの臨床試験を開始、小児の心臓血管手術に使用
帝人、大阪医科大学、福井経編興業は、共同開発の「心・血管修復パッチOFT-G1(仮称)」の臨床試験を開始した。第1例目として、0歳4カ月の室中隔欠損症患者に対する心臓血管手術を実施した。 - マイクロ心臓の開発へ、培養した心筋細胞で自律的な拍動組織を形成
理化学研究所は、微小溝を持つシリコーンゴム製シート上で心筋細胞を培養し、拍動組織「心筋ブリッジ」を自発的に形成することに成功した。拍動組織は自律的に拍動し、培養液を動かすポンプの働きをするという。 - 心電図から心臓カテーテル治療の要否を瞬時に判断するAI技術
慶應義塾大学は、AIを応用して、1枚の心電図から、その患者にカテーテル治療が必要かどうかを80%以上の精度で瞬時に判定する技術を開発した。救急外来における心筋梗塞などの治療の早期化、効率化に貢献する。