既存設備の変更なしにAGVが自律運転、障害物検知で人との協働空間にも:産業用ロボット
技術商社のリンクスは2019年11月7日、東京都内で記者発表会を開き、フィンランドNavitec Systemsが開発するAGV(無人搬送車)向けナビゲーションソフトウェア「Navitrol」の国内販売を2020年3月頃から開始すると発表した。
技術商社のリンクスは2019年11月7日、東京都内で記者発表会を開き、フィンランドNavitec Systemsが開発するAGV(無人搬送車)向けナビゲーションソフトウェア「Navitrol」の国内販売を2020年3月頃から開始すると発表した。AGVメーカーへの提案活動を進め、2027年に約10億円の売り上げを目指す。
Navitrolは周辺環境から自己位置を推定するナチュラルフィーチャーナビゲーション(NFN)技術によって、自律的なルート構築やMES(製造実行システム)/WMS(倉庫管理システム)と連携したフリート管理を実現するソリューションだ。
リンクス社長の村上慶氏は「工場や倉庫内を走行する無人走行車の自動運転は普及段階にある」と述べる。そこで重要な役割を果たすAGVの誘導方式や自己位置推定技術について、「磁気テープ」「QRコード」「反射板」「NFN」の手法に大別できると説明した。
磁気テープ方式は、床へ希望する走行ルートに沿って磁気テープを貼ることでAGVを誘導するもの。この方式では物理的に「仮想レール」を敷くために確実なルート誘導が期待できるが、障害物回避ができないこと、リアルタイムな経路変更ができないこと、経路変更でテープ張り直しが必要になることなどのデメリットがある。
また、QRコード方式は、床に一定間隔で張り付けられたQRコードから建物内の番地情報を読み取ることで自己位置推定を行う技術。同方式は米Amazon.comのロボット技術「Amazon Robotics」でも採用されており、リアルタイムな経路変更が可能なため完全無人環境下では優れた性能を発揮する。一方で、QRコードの敷設といった導入の手間や、障害物の回避が難しいため有人環境で運用できないというデメリットもある。
反射板方式は、AGVを運用する空間内に複数の反射板を取り付け、AGVに搭載されたレーザーレーダーが反射板を検出することで自己位置推定を行う。同方式もリアルタイムに経路変更でき、障害物の回避も可能だ。「無人フォークリフトの80%が反射板方式を採用」(村上氏)する実績もある。一方で、反射板の設置条件に制約があり、「建物内の入り組んだところにも反射板を張らないといけない」という導入時の負担が発生する。
Navitrolが採用するNFN方式は、AGVに装備されたLiDAR(Light Detection and Ranging、ライダー)から得られた建物壁面など空間の特徴と、建物の3D CADデータを照合し自己位置を推定する技術。既存設備への変更が不要で、障害物回避も可能なため有人環境での運用も可能となる。人や他のAGVを回避するような動的な経路変更も容易に設定できる。
NFN方式を採用したAGV(無人搬送車)向けナビゲーションソフトウェアは、Navitec Systems以外の他社製品にも存在するが、村上氏はNavitrolの自己位置推定精度が極めて優れていると語る。「(1998年に設立された)Navitec Systemsは創業から鉱山用重機のナビゲーションソフトウェアを開発していた。鉱山内はGPSによる測位や、磁気テープとQRコードによる自己位置推定が行えないので、NFN方式によるナビゲーションシステムを継続して開発してきた」(村上氏)とし、「Navitec Systemsの自己位置推定精度は±1cm。世界一だと考えている」との見解を示した。
また、Navitec Systemsが提供する専用ツールにより、AGVメーカーはナビゲーションソリューションの構築期間を大幅に短縮できるという。周辺環境マップの作成や搬送ルートの構築もGUI上のツールから行うことが可能だ。
村上氏はAGV市場に参入する企業が今後も増えるとの考えを述べ、「AGVを開発する企業、50〜100社程度をターゲットに提案を進める」方針だ。また、リンクスはタイおよび台湾で現地企業を買収、子会社化したと発表しており、アジア全域での事業展開を進める構えを示した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- お急ぎ便が早く届く秘訣とは――国内最新鋭の「アマゾン茨木FC」を見る
アマゾンジャパンは2019年4月4日、同社独自のロボット技術「Amazon Robotics」を活用した最新鋭の物流拠点「アマゾン茨木FC(フルフィルメントセンター)」(大阪府茨木市)を報道陣に初めて公開した。 - なんてできたヤツなんだ、自律的にも動けて人に付いていくこともできるAGV
豊田自動織機トヨタL&Fカンパニーは、「第3回スマート工場EXPO」において、誘導マーカーなどが不要で自律的な搬送が可能な無人搬送車(AGV)「AiRシリーズ」を参考出品した。 - 牧野フライス製作所がAGVにロボットアームを搭載した自動搬送システムを披露
牧野フライス製作所は「INTERMOLD 2019(第30回金型加工技術展)/金型展2019」で、自社開発のAGVにファナック製ロボットアームを搭載したモバイルロボット「iAssist」を用い、工具の搬送とワークの搬送の2系統を自動化するシステムのデモンストレーションを披露した。 - TDKの1kWクラス無線給電システム、小型高効率でAGVに最適
TDKは、「TECHNO-FRONTIER 2019(テクノフロンティア)」(2018年4月17〜19日、千葉・幕張メッセ)に出展し、伝送電力1kWクラスのワイヤレス給電システム「WPX1000」を初めて展示した。同製品は無人搬送車(AGV)や産業用ロボットなど、バッテリーを搭載する産業用機械の電源用途を想定する。 - 自動車が“作られるため”に自由に動き回る工場へ、SEW-EURODRIVEが実演デモ
ドイツのSEW-EURODRIVEは、ハノーバーメッセ2019(2019年4月1〜5日、ドイツ・ハノーバーメッセ)において、インダストリー4.0などの先進のモノづくりを1つのソリューションとしてまとめた「MAXOLUTION」により、EV(電気自動車)ベンチャーのe.GO Mobileの「e.GO Life」の組み立て工場をイメージした実演デモを行った。 - “人と共に働くロボット”を訴えた安川電機、協働ロボット新製品も参考出品
安川電機は、ハノーバーメッセ2019において、産業用ロボット製品およびロボットを活用したソリューション提案を行った。また、現在展開中の協働ロボットよりも大きいサイズの協働ロボットも参考出品した。