牧野フライス製作所がAGVにロボットアームを搭載した自動搬送システムを披露:INTERMOLD 2019
牧野フライス製作所は「INTERMOLD 2019(第30回金型加工技術展)/金型展2019」で、自社開発のAGVにファナック製ロボットアームを搭載したモバイルロボット「iAssist」を用い、工具の搬送とワークの搬送の2系統を自動化するシステムのデモンストレーションを披露した。
1台で何役もこなせる多能工ロボット「iAssist」
牧野フライス製作所は「INTERMOLD 2019(第30回金型加工技術展)/金型展2019」(会期:2019年4月17〜20日、会場:東京ビッグサイト 青海展示場)で、自社開発のAGV(Automated Guided Vehicle:無人搬送車)にファナック製ロボットアームを搭載したモバイルロボット「iAssist」を用い、工具の搬送とワークの搬送の2系統を自動化するシステムのデモンストレーションを披露した。
工具の搬送では、まずiAssistのロボットアームが工具棚から工具を取り出し、工具プリセッター(ZOLLER製)にセットして、測定を行う。そして、測定が完了した工具をマシニングセンターのATC(自動工具交換装置)マガジンにセットする。ワークの搬送については、ロボットアームがワーク棚から加工対象のワークを取り出し、マシニングセンターのテーブルにセットして加工を開始する。
加工が完了したら、iAssistのロボットアームがマシニングセンターから使い終わった工具を取り出して工具棚に戻す。加工の終わったワークに関しては、3次元測定器(ミツトヨ製)に移して計測を行い、完了したらワーク棚に戻す。
「人手不足が進む現場での作業(搬送)支援を目的に開発した。人手不足の問題を解消すると同時に、作業員が帰宅した夜間などにこうした自動化システムを活用することで、工作機械の稼働率向上にも役立てられる」(同社説明員)。
マシニングセンターなどを手掛ける同社は付帯設備の一環として、ファクトリーオートメーションシステムの開発にも注力する。今回のiAssistによる自動化システムもその延長線上にある取り組みだとし、「レイアウトフリーで、1台で何役もこなせるような“多能工ロボット”の実現を目指した。世の中にAGVがいくつか存在するが、500kg可搬で、斜め走りに対応するなど、われわれの要求を満たすAGVがなかったため自社開発に踏み切った」(同社説明員)という。
マーカーを読み取り、ロボットアームの最終的な動きを補正
あらかじめコンピュータ上で地図を生成し、iAssistの底面にある2つのレーザーレンジファインダーで周りの物体との距離を測定しながら、現在位置を捉え、目的の棚や装置までの最適ルートを計算して工具やワークを搬送する。「例えば、ルート上に作業員が立ち入った場合などは、レーザーレンジファインダーでそれを障害物だと認識し、別ルートを再生成して避けて通ることができる」(同社説明員)。
iAssistと、マシニングセンターや3次元測定器などとの位置関係は、ロボットアーム先端にあるカメラでマーカーを読み取ることで、正確な距離を捉える。「AGVと各装置との位置関係は、どうしてもわずかにずれてしまう。そのため、そのままロボットアームを動かしてしまうと、予期せぬ衝突や事故を起こしてしまうかもしれない。それを防ぐために、iAssistでは装置の前まで来たらマーカーを読み取り、ロボットアームの最終的な動きを補正することで正しい動作を実現している」(同社説明員)という。
ちなみに、iAssistの下半分がAGVのユニットで、上半分はロボットアームを動かすためのコントローラーやインバーターなどが内蔵されている。単なる物品の搬送だけであれば、AGVユニットのみでも利用できる。また、今回はファナック製のロボットアームを使用しているが、「外部インタフェースがコントロールできるものであれば技術的にどのようなロボットアームでも対応できる」(同社説明員)。
iAssistの製品化については現時点で未定だとし、「まずは自社工場内で使用して検証を進め、実績を積んだ上で将来的な製品化につなげていきたい」と同社説明員は述べる。
関連記事
- 人手不足対策で完全自動化は逆効果、人とロボットの協力をどのように切り開くか
人手不足に苦しむ中で、工場でもあらためて自動化領域の拡大への挑戦が進んでいる。その中で導入が拡大しているのがロボットである。AIなどの先進技術と組み合わせ、ロボットを活用した“自律的な全自動化”への取り組みも進むが現実的には難易度が高く、“人とロボットの協調”をどう最適に実現するかへ主流はシフトする。 - 協働ロボット、ロボットシステムに残された課題と未来
協働ロボットを現場で活用するのにどのような工夫が必要か――。ロボット技術の総合展示会「2017国際ロボット展」では、ロボットメーカーおよびユーザー企業によるパネルディスカッション「ロボットフォーラム2017」が実施され、協働ロボットの意義について語った。 - 機械は人の仕事を奪わない、“人とロボットがともに働く現場”が拡大へ
2016年は人工知能関連技術が大きな注目を集めて「機械が人間の仕事を奪う」という議論が大いに盛り上がりを見せた。こうした一方で2017年には「現場」において、こうした動きと逆行するように見える「人とロボットが協力して働く世界」が始まりを迎える。 - いまさら聞けない産業用ロボット入門〔前編〕
日本は「ロボット大国」とも呼ばれていますが、その根幹を支えているのが「産業用ロボット」です。それは世界の産業用ロボット市場で圧倒的に日本企業がシェアを握っているからです。では、この産業用ロボットについてあなたはどれくらい知っていますか? 今やあらゆるモノの製造に欠かせない産業用ロボットの本質と基礎を解説します。 - 製造現場での普及を2倍に、ロボット新戦略が目指すロボットと共に働く未来
日本政府が主催する「ロボット革命実現会議」は、ロボット活用の技術的および規制面でのロードマップを示した「ロボット新戦略」を発表した。本稿では、この新戦略の中で示されている「モノづくり」分野への取り組みにフォーカスし、その内容を紹介する。 - レーザー加工だけで実現する撥水効果、金型表面に施し離型効果2割以上増加
牧野フライス製作所は「第29回日本国際工作機械見本市(JIMTOF2018)」において、切削加工だけで撥水効果をもたらす加工パターン「ロータスパターン」を紹介した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.