ストラタシス、産業グレードの新たな熱可塑性プラスチック材料を発表:3Dプリンタニュース
ストラタシス・ジャパンは、耐久性、耐熱性、耐薬品性を備える産業グレードの新たな熱可塑性プラスチック材料を発表した。
ストラタシス・ジャパンは2019年10月29日、耐久性、耐熱性、耐薬品性を備える産業グレードの新たな熱可塑性プラスチック材料を発表した。
今回発表の新材料は、シリーズ最大造形サイズを誇る産業用FDM(熱溶解積層)方式3Dプリンタ「Stratasys F900」(以下、F900)向けの「Antero 840CN03」、産業用小型FDM方式3Dプリンタ「Stratasys F370」(以下、F370)向けの「Diran 410MF07」および「ABS-ESD7」の3種である。
「Stratasys F900」向けの新材料「Antero 840CN03」
F900向けのAntero 840CN03は、ストラタシスが独自開発するAntero高性能ポリマーのポートフォリオにおける2番目のPEKKベースポリマーで、Arkema(アルケマ)の「Kepstan PEKK技術」を活用している。機械特性、化学薬品特性、静電気放電(ESD)特性に優れ、従来工法で製造される高コストな最終製品のパーツの置き換えや、薬品、オイルなどを使用する過酷な環境での利用に適しているという。また、ESD特性を備え、強靭(きょうじん)かつ軽量なパーツを必要とする航空宇宙、産業アプリケーションなどにも最適だとする。
「Stratasys F370」向けの新材料「Diran 410MF07」「ABS-ESD7」
F370向けのDiran 410MF07は、ストラタシスが開発した重量比7%の鉱物を含有するナイロンベースの新材料だ。炭化水素ベース化学薬品への耐性、滑り抵抗を低減する平滑表面に加え、極めて高い靭性と低摩擦性を提供する。優れた靭性と衝撃強度を備えることから、現場で手荒に扱われるようなツーリングアプリケーション、例えば治具/工具などの他、最終製品の造形にも適しているという。
「Diran 410MF07」で造形されたロボット用エンドエフェクタ。優れた靭性と衝撃強度を備えており、手荒な取り扱いにも耐えられるという(「ストラタシス 3Dプリンティングフォーラム 2019」の展示会場にて撮影) [クリックで拡大]
同じくF370向けのABS-ESD7は、静電気防止特性のある熱可塑性プラスチック材料で、これまでFortusシリーズのみで利用可能だったもの。静電気の発生を抑制し、電気を帯びた際はゆっくりと放電する静電気拡散性を備え、粉末、粉じん、微粒子といった他材料への放電や誘引を防止する。静電気に敏感なアプリケーションに最適で、低コストでの造形が可能だとする。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 日野のコンセプト「FlatFormer」のエアレスタイヤ製作を支えた3Dプリント技術
日野自動車が「第46回東京モーターショー2019」に参考出品したモビリティコンセプト「FlatFormer」のエアレスタイヤのモデル製作に、ストラタシスの産業用3Dプリンタ「Stratasys F900」が採用された。 - FDM方式の大型3Dプリンタ「F900」を2台導入し、造形サービス事業を加速
アルテックは、ストラタシスのFDM方式3Dプリンタ「F900」を2台導入した。同社が保有する3Dプリンタは計20台となり、造形サービス事業をさらに拡大する。 - 「試作開発に再び変革を起こす」、ストラタシスが3Dプリンタの新製品を投入
3Dプリンタ大手のストラタシスは、試作開発に特化したFDM方式3Dプリンタ「F123シリーズ」を発表した。「3Dプリンタで28年の歴史を積み重ねてきたストラタシスが、試作開発に再び変革を起こす」(同社)という。 - いまさら聞けない 3Dプリンタ入門
「3Dプリンタ」とは何ですか? と人にたずねられたとき、あなたは正しく説明できますか。本稿では、今話題の3Dプリンタについて、誕生の歴史から、種類や方式、取り巻く環境、将来性などを分かりやすく解説します。 - 3Dプリンタは臨界点を突破したのか
新たなモノづくりの姿を示す象徴として「3Dプリンタ」は大きなムーブメントを巻き起こしている。しかし、3Dプリンタそのものは既に1980年代からある技術で過去には夢を追いつつも突破できない壁があった。かつての研究の最前線から今のムーブメントはどう見えるのか。東大名誉教授で現在は世界最大のEMSフォックスコンの顧問も務める中川威雄氏に話を聞いた。 - 「単なる試作機器や製造設備で終わらせないためには?」――今、求められる3Dプリンタの真価と進化
作られるモノ(対象)のイメージを変えないまま、従来通り、試作機器や製造設備として使っているだけでは、3Dプリンタの可能性はこれ以上広がらない。特に“カタチ”のプリントだけでなく、ITとも連動する“機能”のプリントへ歩みを進めなければ先はない。3Dプリンタブームが落ち着きを見せ、一般消費者も過度な期待から冷静な目で今後の動向を見守っている。こうした現状の中、慶應義塾大学 環境情報学部 准教授の田中浩也氏は、3Dプリンタ/3Dデータの新たな利活用に向けた、次なる取り組みを着々と始めている。