仕事に関する学びの実態――労働時間の短縮は必ずしも学びにつながらない:キャリアニュース
リクルートマネジメントソリューションズが「職場での個人の学びに関する実態調査」の結果を発表した。「過去1年で仕事に直結する新しい学びがあった」と59.7%が回答し、労働時間が最も多いグループが多くを学んでいることが分かった。
リクルートマネジメントソリューションズは2019年10月17日、「職場での個人の学びに関する実態調査」の結果を発表した。
同調査は、従業員規模が300人以上の会社に勤務する20代〜50代の正社員を対象とした。性別や年齢層、職務系統が均等になるように回答を回収し、457人から有効回答を得た。また、今回の調査対象である「学び」は「仕事に関する学び」で、知識やスキルの習得だけでなく、経験や対人関係からの学びなども含む。
初めに、過去1年で新しい学びがどのくらいあったかを尋ねた。「現在携わっている仕事に直結する新しい学び(現在の学び)」と「中長期的に自分のキャリア形成に役立つ新しい学び(中長期の学び)」に分けて尋ねたところ、「現在の学び」が「あった」は、「どちらかといえば(学びが)あった」を合わせて59.7%だった。「中長期の学び」は、50.1%が「あった(どちらかといえばを含む)」と回答した。
次に、仕事上のパフォーマンスやコミットメントに、学びがどのように関係しているかを調べた。「期待通りの成果を上げている」「今の仕事にやりがいを感じる」など適応感について7項目を尺度化し(まったくあてはまらないを1とし、とてもあてはまるを6とする)、学びの有無を高適応群(上位49.9%)、低適応群(下位50.1%)ごとに見たところ、高適応群は「学びがあった」「どちらかといえば学びがあった」の割合が「現在の学び」で78.9%(低適応群は40.6%)、「中長期の学び」で67.6%(同32.7%)と、低適応群に比べて大幅に高くなっている。
続いて、学ぶのはどのような要因がある時かを調査した。「環境変化」「職務の重要度、自律度」「キャリア見通し」「専門職志向」について検証したところ、いずれも高適応群と低適応群には、学びの有無に有意な差が見られた。なお、年代や役職、学歴では、学びの有無に統計的な差は見られなかった。
最も学びが「あった」のは、労働時間が最も長いグループ
労働時間と学びの関係についても調べた。月間の労働時間で分けたグループと学びの有無は、「現在の学び」も「中長期の学び」も統計的に有意な差はなかった。「現在の学び」「中長期の学び」を「あった」「どちらかといえばあった」と回答した割合が最も多かったのは、いずれも月間労働時間が最も長い「240時間以上」のグループだった。
過去1年の「労働時間の変化」と「学びの量の変化」の関係は、「現在の学び」「中長期の学び」のどちらも、労働時間が増えたグループで、学びの量が増えた人の割合が多かった。労働時間の短縮が、必ずしも学びの多さにつながるわけではなさそうだ。
学び方については、自分にとって「得意な学び方がある」が11.2%、「なんとなくある」が39.8%で、約5割が「ある」と答えている。
「得意な学び方がある」と回答した人を見ると、「学びがあった」「どちらかといえば学びがあった」が「現在の学び」「中長期の学び」ともに8割を超えている。得意な学び方がある人は、そうでない人に比べ、より多く学んでいると考えられる。
「得意な学び方」についての自由回答では、「経験から学ぶ」「人と学ぶ」「仮説、想定をもつ」「言語化、アウトプットする」に関するものが多く見られた。
次に、「仕事を通じた学びにつながる行動」について尋ねた。設定されたさまざまな項目の全てにおいて、高適応群の平均点が高かったが、特に低適応群との差が大きかった項目は、「何事も成長機会と捉えて、目の前の仕事を大切にしている」「人に話をすることで、ヒントやアイデアを得ようとすることが多い」「仮説検証を意識的に行いながら仕事を進める」「新しい経験を積める環境、成長できる環境を求めて行動している」「自発的にスキル・能力開発に取り組んでいる」だった。
新しいことを学ぶ時の情報収集方法は、「ネットで調べる」が最も多かった。内訳は「とてもあてはまる」12.7%、「あてはまる」33.3%、「ややあてはまる」37.9%となっており、83.9%が「あてはまる」と回答している。次に多かったのが「人に聞いてみる」の70.2%、「実際に経験してみる」63.5%だった。この問いについては、年代を問わず同様の回答傾向が見られた。
学びのテクノロジーや、その活用法で最近よく使うようになったもの、効果的だと思っているものを尋ねたところ、「チャットツールによるリアルタイム情報共有」や「遠隔会議システムによる対話機会の増加」が多く挙がった。その他、「学習教材のIT化」や「情報記録、保管の効率化」も見られたが、件数は少なく、ITによる効率化が当たり前になっていない職場が依然として多いことがうかがえる。
「現在の会社や職場は、成長できる環境だと思いますか」という質問に対しては、「とてもそう思う」「そう思う」を合わせて41.4%が「そう思う」と回答した。「現在の学び」「中長期の学び」について、「あった」「どちらかといえばあった」を選択した高群は、学びが「なかった」「どちらかといえばなかった」を選んだ低群に比べて、職場が成長できる環境であると回答した人が多かった。しかし、「現在の学び」「中長期の学び」いずれの高群でも58.7%、61.6%と、必ずしも回答率が高いとはいえない結果となっている。
「現在の会社や職場が自分にとって成長できると思う理由」には、「取り組みがいのある仕事」「同僚からの刺激」「教育制度」「成果主義」が多く挙がった。反対の「成長できないと思う理由」としては、「仕事に変化がない」「評価されない」「学習風土がない」が挙がっている。
また、「学びにつながると思われる職場風土」について選択肢を設定し、それぞれどの程度あてはまるかを尋ねた。職場を成長できる環境だと思う高成長環境群と、成長できる環境だと思わない低成長環境群の平均点を比べて、差が大きかった選択肢を取り上げると、「従業員が仕事を通して成長できることを重視している」「お互いの成長への関心が高い」「お互いの成果への関心が高い」「互いに切磋琢磨している」「お互いの仕事の成果やプロセスに率直にフィードバックし合える」となった。
職場に学びを支援する制度や仕組みがあるか、また導入割合や、それが役に立っているかも尋ねた。その結果、「上司との1on1ミーティング」「上司、同僚からのフィードバックサーベイ」「勤務時間、場所の制度」が導入割合、役立ち度ともに高かった。
導入割合はそれほど高くないものの、役立ち度が高いのは、「自己学習のための金銭支援」「社内の多様な人との勉強、交流会」「社内外の人と情報交換する場所」「社外副業」「本業以外の仕事機会」だった。
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