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「残ったのは集合写真だけ」ではもったいない! 失敗ハッカソンを防ぐDMM.make AKIBA流イベント企画術DMM.make AKIBAを支えるプロフェッショナルたち(2)(2/2 ページ)

さまざまなモノづくりを支援するDMM.make AKIBAの運営に携わる人たちにスポットを当て、世の中にないものを生み出そうとする現場の最前線を追う。第2回は、年間100件以上のイベントに対応する企画チームの取り組みを紹介し、「企業イベントを成功させるための条件」に迫る。

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コミュニティーの力が企業を動かす

 企画提案型を含めた会場提供を行うようになった経緯はそれだけではない。スタートアップが集まるコミュニティーとして、DMM.make AKIBA自身が成熟したことも大きい。転機となったのは2017年8月19日、同月26〜27日に実施した、日本ロレアル主催の「ビューティーハッカソン」だ。

 IoTやハードウェアスタートアップという文脈からは距離があるように思われる化粧品業界だが、世界最大手であるロレアルの日本法人がDMM.make AKIBAのスポンサー会員となったことをきっかけに、ビューティーハッカソンが企画されたのだ。

 開催までに半年をかけるなど、入念な準備を経て実施したハッカソンには、定員の倍以上の応募が集まり、エンジニアやデザイナーだけでなく、ハッカソン自体が初めてという女性も多数参加した。このハッカソンがきっかけとなり、DMM.make AKIBAが企画や運営に携わる他社主催イベントへ参加するリピーターも増えていった。

 また、審査員やメンターとして、DMM.make AKIBAを利用するクリエイターやスタートアップが参加したり、スポンサー企業が他のスポンサー企業主催のイベントに協賛したりするなど、コミュニティーを生かした企画が実現できるようになった。さらに、潤沢な機材とテックスタッフを活用することで、イベントでの試作や開発を円滑に実施できるようになり、“独自色”のある企画が打ち出せるようになったという。

 現在はコミュニティーを活用したハッカソンやアイデアソンだけでなく、女性限定のミートアップイベント「IoT女子会」など、企画のバリエーションも広がっている。また、IoTの基礎を学ぶ研修や、無線通信機能付きの「ミニ四駆」を製作するワークショップなど、イベントにこだわらないメニューもあり、企業の目的によってはイベント以外の企画を提案することもある。

IoT女子会
DMM.make AKIBAの中でも異色の企画といえる「IoT女子会」は、IoTをはじめ、モノづくりやガジェットなどに興味関心がある女性限定のコミュニティー。女性を対象とした商品企画やブランディングを強化したいメーカー企業からの引き合いが多いという

 「何となく、華があるように映るからイベントをやりたいと考えている企業でも、よくヒアリングしてみると、実は『社員のIoTに対する関心を高めたい』や『新規事業アイデアを出しやすくしたい』といった要望を持っていることがあります。そういう場合は、イベントではなく別の商材である研修をその企業に合わせて提案することもあります」(渡辺氏)

失敗しない企業イベントの条件

 これまで数多くの企業の課題と向き合い、イベント運営に携わってきたDMM.make AKIBAが考える「失敗しない企業イベントの条件」とは何だろうか。荒井氏と渡辺氏は2つの条件を挙げる。

 1つは、社内の意思を統一し、目的を明確にすることだ。明確なビジョンがない新規事業開発の現場では、「もうかるタネを見つけろ」「新しい事業につながる技術をリサーチしろ」など、全く異なる指示が上層部から降ってきて、現場では異なるニーズやアイデアが出てくる……といった状況も珍しくない。そうした状況のままでイベントを企画すると、担当者にとって満足度の高い内容だったとしても、上層部からは真逆の評価が下されるといったことも起こり得る。だから、まずは中長期的な目標と直近のマイルストーンを定義した上で、イベントの目的を絞り込み、それを社内で合意することが肝心だという。

 「“1つのイベントで達成できる目的は1つ”と捉え、まずは何を実現したいのかを明確にし、適切なアクションを導き出すことが重要です。IoTに詳しい外部の人に自社製品を触ってもらってフィードバックを得たいならハンズオンイベントを提案しますし、新規事業の種がほしいのであればアイデアソン、具体的なイメージが湧く試作までほしいのであればメイカソンやハッカソンといった形で、目的とアクションが合致しているかに時間をかけるべきです」(荒井氏)

タイカのメイカソン
スポンサー会員である化学メーカーのタイカは、自社製品の「αGEL(アルファゲル)」を活用したメイカソンを過去2回実施。2019年にはメイカソンの受賞作品をブラッシュアップさせて、「Maker Faire Tokyo 2019」で展示した(写真提供:DMM.make AKIBA)

 もう1つは、イベント終了後のシナリオ作りだ。仮にハッカソンで優れたアイデアのタネを見つけることができたとしても、ブラッシュアップしないことには製品化にはつながらない。そのため、終了後の試作開発のフォローを誰が担うのか、いつまでに中間成果物を出すのかといった社内調整はもちろんのこと、ハッカソン参加者とあらかじめ著作権の帰属先に関して契約を結んでおくなど、いくつかの事前準備が必要となる。

 先に紹介した日本ロレアルのハッカソンも含め、DMM.make AKIBAではハッカソン終了後、優勝チームに対して半年間限定の会員証を発行するなどし、継続的な開発を支援している。イベント終了後に残ったのは参加者と関係者の集合写真だけだった……ということにならないためにも、イベントの目的に沿った計画を作成することが重要だ。(次回に続く)

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