消滅可能性都市から次世代モノづくりのメッカへ、地方創生で加賀市とDMMがタッグ:3Dプリンタニュース
石川県加賀市とDMM.comは、3Dプリント技術の提供および連携を基本とした包括連携協定を締結し、加賀市を“次世代モノづくりのメッカ”とする構想の実現に向けて、両者が提携することを発表した。
石川県加賀市とDMM.comは2019年8月7日、3Dプリント技術の提供および連携を基本とした包括連携協定に関する調印式を行い、加賀市を“次世代モノづくりのメッカ”とする構想の実現に向けて、両者が提携することを発表した。
近年、加賀市では少子化や転出による人口減少の傾向が続いており、日本創成会議から「消滅可能性都市」(※)の指摘を受けるほど、その状況は深刻化していた。そうした中、地方創生に向けた取り組みを強化し、先端技術を活用した産業創出や人材育成などイノベーション施策に注力してきたという。
※2010〜2040年にかけて、20〜39歳の若年女性の人口が5割以下に減少する市区町村を消滅可能性都市として定義。
今回の連携協定では、加賀市が進めてきたイノベーション施策を軸に、「新産業の創出」「地場産業の進化」「次世代モノづくりの人材育成」の取り組みをより実効性のあるものとし、古くから部品メーカーを中心としたモノづくりが盛んな加賀市を、3Dプリント技術を活用した“次世代モノづくりのメッカ”として発展させることを狙う。
「4〜5年前から第4次産業革命の流れを受け、加賀市では新規産業の創出や人材育成を中心とした先進的な取り組みを進めてきた。まいた種から芽が出るにはまだ時間がかかるが、加賀市ではさまざまな自己改革に取り組んできた。そんなとき、加賀市で創業し、現在、日本一を誇る3Dプリンタ工場を加賀市に置くDMM.comからお声掛けいただき、連携に向けた協議を進めるに至った。今回の連携協定を活力の源とし、全国に誇れるモデルケースとして発信していきたい」と、石川県加賀市 市長の宮元陸氏は意気込む。
加賀市のふるさと納税の返礼品も3Dモノづくりで!
両者による具体的な取り組みは大きく3つある。「1.3Dプリンタ モノづくり都市化への発展」「2.観光産業の振興」「3.未来の人材育成」だ。
3Dプリンタ モノづくり都市化への発展については、3Dプリンタを活用したモノづくりに取り組む企業や加賀市での導入活用、DMM.comでの知見などを発信するイベント「3Dモノづくりフォーラムの開催」(時期未定)、地場企業とのコラボレーションを促進して加賀市の産業高度化などに寄与する「地元企業との連携(産業の高度化への貢献)」、そして、両社が協業してオリジナル商品を開発する「加賀オリジナルの3Dモノづくりの実践(地場商品作りの立ち上げ)」を掲げる。
観光産業の振興では、加賀市の3Dモノづくり工場の見学ツアーをはじめとしたビジネス向けの観光と、温泉地などの従来の観光を組み合わせた新しいビジネスツーリズムの場を生み出し、加賀市の魅力を発信していく。ちなみに、DMM.comでは教育関連の旅行商品提供を行うトラベル事業を展開しており、企画から開発、提供までを担うという。
未来の人材育成では、加賀市にあるDMM.comの拠点に次世代のモノづくり人材を受け入れ、加賀市と協力して人材育成を加速させる考えだ。3Dプリンタにかかわらず、3D CADをはじめとするデジタル設計人材、生産や物流をマネジメントする人材、プロダクトマーケティングの人材、観光関連の企画を行う商品企画人材などの育成で協業するとしている。
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