AIを活用したプラント向け異常予兆検知システムを製油所へ納入:製造IT導入事例
NECは、プラント向け異常予兆検知システムをJXTGエネルギー水島製油所(岡山県倉敷市)のボイラー設備へ納入する。2019年10月に稼働開始の予定だ。
NECは2019年9月13日、AI(人工知能)を活用したプラント向け異常予兆検知システムを、JXTGエネルギー水島製油所(岡山県倉敷市)のボイラー設備へ納入すると発表した。水島製油所は国内最大規模の原油処理能力を持つ。同システムの稼働は同年10月を予定している。
同システムは、NECのAI技術群「NEC the WISE」の1つである「インバリアント分析技術」を活用する。インバリアント分析技術とは、収集した大量のセンサーデータの中にあるシステムの特徴を表す普遍的な関係性(インバリアント)を自動的かつ網羅的に抽出してモデル化し、このモデルと一致しない挙動をサイレント障害として検知するAI技術だ。
同システムでは、温度、圧力、流量、バルブ開度、水位など、ボイラーの運転を監視、制御する約500カ所のセンサーデータを収集し、異なるセンサー同士の関係性を自動的に発見する。この関係性をいつもの状態として定義し、変化が起きた際にアラームを出す。
これにより、人手では困難だった設備異常の予兆を早期に自動検知できる。また、いつもと違う状態から異常予兆を検知した場合、その影響範囲の絞り込みや原因の切り分けも可能となった。
導入に当たり、同システムを用いて、水島製油所のボイラー設備における過去の運転データを利用して実証した。その結果、これまでの閾値設定や傾向分析による監視システムに比べて約1週間早く異常の予兆を検知できたという。両社は、これまで多くの時間を要していた原因分析の時間短縮や作業負担の軽減、保全計画の最適化につながるとしている。
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