日産が金型なしでボディーパネルを生産、表面はそのまま塗装できる仕上がり:車両デザイン(2/2 ページ)
日産自動車は2019年10月2日、同社追浜工場(神奈川県横須賀市)で記者説明会を開き、金型を使用しない金属部品の成形技術を発表した。
将来的には新車の生産での採用も
今回発表した技術は、ボディーパネルのカスタマイズや旧型車の補修といったニーズに応えるため開発した。こうした需要はいずれも少量生産で、金型成形では生産コストが高くなる。また、金型を長期間にわたって保管し、メンテナンスし続けるコストも発生する。インクリメンタル成形はプレス用の金型が不要で、部品の3次元データがあれば加工できるため、金型成形と比べてコストを大幅に抑えられる。3次元データがない場合はスキャンし、2次元の図面から3次元化した上で、ロボットの制御を決める。
「プレス成形は、月産1000〜1万台、試作型でも月産1000台未満の生産量に向けたものだ。型費に数百万〜数千万円がかかっている。板金は作業者の技術や作業時間が必要となり、カスタマイズや旧型車のニーズの規模に応えるのが難しい。月産100台までであればインクリメンタル成形が最もリーズナブルだ。3Dプリンタと比較しても競争力があるし、性能を含めてみるとボディーパネルは(3Dプリンタの積層造形ではなく)板でやる必要がある」(冨山氏)
今回は少量生産向けの生産技術として発表したが、日産自動車 執行役副社長 日産生産・SCM担当の坂本秀行氏は「あくまで野望だが」と前置きした上で、加工速度が月産500〜1000台に向上すれば、新車の生産でインクリメンタル成形が活用できるという見方を示した。500〜1000台であれば、「国内向け少量生産モデルの生産量をカバーできる。月1000台行ければ(金型なしで生産できれば)世界が変わる。金型ではできないデザインも可能になる」(坂本氏)。
加工速度でネックになっているのは、ロボットアームが加工の指示を処理するのに限界がある点だ。「今回は汎用ロボットを使っている。汎用ロボットは、モノを持ち上げるなど単純な動作がメインだ。鋼板上を点ごとに移動して圧力をかけるという複雑な動きを処理しきれていない。ロボットだけが要因ではない。加工形状に合わせてロボットが通る点の数を調整するなど最適化の余地がある」(日産自動車の担当者)。
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