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「自動車技術はもっと異業種と連携を」、交通事故が起きた後にいかに早く助けるか人とくるまのテクノロジー展2019

自動車技術会は2019年5月22日、「人とくるまのテクノロジー展 2019 横浜」(2019年5月22〜24日、パシフィコ横浜)の開催に合わせて記者説明会を開いた。自動車技術会 会長の坂本秀行氏(日産自動車)が出席し、救急自動通報システム(D-Call Net)と、死亡重症確率推定アルゴリズムの標準化の取り組みについて説明した。

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自動車技術会の坂本秀行氏(クリックして拡大)

 自動車技術会は2019年5月22日、「人とくるまのテクノロジー展 2019 横浜」(2019年5月22〜24日、パシフィコ横浜)の開催に合わせて記者説明会を開いた。自動車技術会 会長の坂本秀行氏(日産自動車)が出席し、救急自動通報システム(D-Call Net)と、死亡重症確率推定アルゴリズムの標準化の取り組みについて説明した。

 この取り組みは自動車業界と医学界が協力した医工連携の好例の1つ。坂本氏は「自動車は幅広い産業や学術領域と連携が必要だ。今はまだうまくできていない部分も多い。通信や知能化といった分野が異業種連携の中心だったが、医学界ともまだまだ連携すべきだ。通信が車内のエンターテインメントだけでなく、安全にも大きくかかわることを広く周知していきたい」と語った。

交通事故死亡者数をさらに減らすために

 交通事故死亡者数は、ピークである1970年の1万6765人から、2018年には3532人に減少した。衝突安全によって事故が起きた時にいかに乗員を守るか、予防安全によっていかに事故を回避するかといった技術開発が貢献してきたが、今後もさらに交通事故死亡者数を減らしていく必要がある。これについて坂本氏は「事故が起きた後にいかに早く助けるかというテーマはまだ取り組みの余地が大きい」と語った。


オールジャパンで開発した重症死亡確率推定アルゴリズム(クリックして拡大) 出典:自動車技術会

 事故発生時に自動で通報する仕組みは海外にもあり、欧州ではe-Callが法規化されている。日本のD-Call Netの特徴は、ECUの情報から事故の被害の大きさを推定する点だ。死亡重症確率推定アルゴリズムは、トヨタ自動車やホンダ、日本大学、日本医科大学の協力で開発した。「協調領域として取り組んだ良い成果」(坂本氏)だという。

 D-Call Netでは、交通事故によって車両のエアバッグが展開すると、専用の車載情報器を通じて位置情報、衝突時の速度変化や方向、シートベルトの着用の有無といったデータが、日本緊急通報サービスなどに自動で送信される。通報を受信したオペレーターは、国内の交通事故280万件を基に構築した死亡重傷確率推定アルゴリズムによって、通報された事故のデータから運転席と助手席の死亡・重傷率を算出する。

 消防が事故を把握するまでの時間や、ドクターヘリの出動要請までの時間を短縮することで、治療を少しでも早く始められるようになる。事故が発生してから治療を開始するまでの時間が短ければ短いほど死亡率が大幅に下がるため、交通事故死亡者数の低減に貢献する。D-Call Netの導入前後を比較すると、導入初期の段階で治療開始までの時間を17分短縮できた。これは、年間282人の交通事故死者数の救命効果に相当するという。

事故の被害を車外まで把握するには

 自動車技術会は2018年度、死亡重症確率推定アルゴリズムの国際標準化に向けて、衝突時の障害レベルを予測する障害リスク曲線の作成方法とその評価方法をJIS規格として発行した。2019年はISO WG7で議論を進め、ISO発行も目指す。事故の情報を受け取ったオペレーターごとに判断のばらつきがあってはならないため、標準化が必要になっている。

 今後のD-Call Netの技術課題としては、クルマと衝突した歩行者や自転車、二輪車を対象とした被害の大きさの推定がある。エアバッグが展開した瞬間の車載カメラの映像をはじめ、車両に搭載したセンサーをさらに活用することが車外の被害推定のカギを握る。また、被害を推定するための画像認識や衝突のデータとの統合処理なども必要になる。坂本氏は「ハードルがあるが協調にふさわしいテーマ」だと語った。

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