イノベーションに対応するシーメンス、「ガス&パワーの分社はその結果」:製造マネジメントニュース
シーメンスの日本法人は、イノベーション戦略とガス&パワー事業を分社する方針などについて説明。2020年4月に予定しているガス&パワーの新会社の設立は、イノベーションに対応する戦略の一環だという。
シーメンス(Siemens)の日本法人は2019年9月24日、東京都内で会見を開き、イノベーション戦略とガス&パワー事業を分社する方針などについて説明した。
同社は同年4月から、スマートシティーに対応する「スマートインフラストラクチャー」、スマート工場や制御機器、製造業向けソフトウェアなどを手掛ける「デジタルインダストリーズ」、発送電設備や関連システムを扱う「ガス&パワー」という3つの社内カンパニーと、風力発電システムのシーメンス ガメサ(Siemens Gamesa)、鉄道システムのシーメンス モビリティ、医療システムのシーメンスヘルスケア(Siemens Healthineers)という3つの戦略会社から成る新たな組織体制に移行した。現在はさらなる組織改編に着手しており、社内カンパニーのガス&パワーとシーメンス ガメサを統合した新たな戦略会社を2020年4月に発足させる予定だ。
シーメンス日本法人 社長兼CEOの藤田研一氏は、これら事業ポートフォリオの組み換えはイノベーションに対応するためと説明する。「蒸気機関の登場や、真空管からICへの移行といった技術面だけでなく、スマートフォンの“再発明”やEコマースといったビジネス面でもイノベーションは起こる。シーメンスは、これらイノベーションに対応するための体制を構築している」と語る。
同社は、メガトレンドの予測、予測結果に基づく将来像の策定、経営戦略への落とし込み、事業ポートフォリオの組み換え、事業別の将来像の確認と方針確定、必要事業の買収、事業ポートフォリオの整理といったプロセスを踏まえることでイノベーションに対応している。ガス&パワーの新たな戦略会社の設立はという事業ポートフォリオの組み換えも、このプロセスに基づくものだ。
藤田氏は、欧州のエネルギー企業であるエーオン(E.ON)とRWEの時価総額が、2010年までに1000億ユーロ近くまで伸びた一方で、2010年以降は原子力や火力の採算性が悪化したことを受けて大幅に下落し、現在は事業モデル変革に取り組み大胆な再編を行っていることを例に挙げた。「現在のエネルギー市場は、脱炭素へのシフトが強い。再生エネルギー利用を推進する国際イニシアチブRE100への加盟や、ESG(環境、社会、ガバナンス)投資も注目を集めるようになっている」(同氏)。
再生エネルギーへのシフトに加えて「都市化と分散化」も、社会に引き起こされるイノベーションとなる。人口1000万人以上のメガシティーへの人口集約が進む一方で、それらメガシティーに供給される電源は分散化していく。
今回のガス&パワーの新たな戦略会社の設立は、再生エネルギーへのシフトや都市化と分散化というイノベーションに対応するための施策となる。藤田氏は「事業環境の変化予測と新技術を掛け合わせで、業界イノベーションを乗り切る事業戦略方程式を導き出していく」と述べている。
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