組織再編を重ねるシーメンス、「MindSphere」は国内展開を着実推進:製造マネジメントニュース
シーメンス(Siemens)の日本法人は、ドイツ本社が推進する中期計画「Vision2020+(ビジョン2020プラス)」の進行状況や、発電事業の分社化の方向性などについて説明した。
シーメンス(Siemens)の日本法人は2019年6月21日、東京都内で会見を開き、ドイツの本社が推進する中期計画「Vision2020+(ビジョン2020プラス)」の進行状況や、発電事業の分社化の方向性などについて説明した。
シーメンスグループは2018年8月、従来の中期計画「Vision2020」の目標の前倒し達成に合わせてVision2020+を発表。2020年を目標にさらなる成長を遂げるため、3つの社内カンパニーと3つの戦略会社に組織を再編する方針を打ち出した。2019年4月からの組織体制は、3つの社内カンパニーとなる、スマートシティーに対応する「スマートインフラストラクチャー」、スマート工場や制御機器、製造業向けソフトウェアなどを手掛ける「デジタルインダストリーズ」、発送電設備や関連システムを扱う「ガス&パワー」、3つの戦略会社となる、風力発電システムのシーメンス ガメサ(Siemens Gamesa)、鉄道システムのシーメンス モビリティ、医療システムのシーメンスヘルスケア(Siemens Healthineers)という構成になっている。総売上高は約830億ユーロ(約10兆1400億円)だ。
なお、シーメンス モビリティは、Vision2020+の発表時点ではフランスのアルストム(Alstom)との合併を目指していたが、欧州の規制当局により承認されなかったため、当面は独立企業として事業展開していくことになった。
この組織再編に続いて、社内カンパニーのガス&パワーと戦略会社のシーメンス ガメサを統合した新たな戦略会社の発足も決定している。売上高270億ユーロ、従業員数8万8000人に達し、在来発電、オイル&ガス、送電、再生エネルギーの各分野で世界シェア2位、これらの内、分散化電源と洋上風力発電では世界シェア1位を誇る。「上流から下流まで電力のバリューチェーンを総合的にカバーする」(シーメンス日本法人 社長兼CEOの藤田研一氏)という。これだけの規模の事業再編となることから体制構築のめどは2020年4月となっており、その後同年10月にドイツ株式市場でこの新たな戦略会社を上場させる計画だ。
これにより、本社に残る2つの社内カンパニーの売上高規模が約300億ユーロ、再編後の3つの戦略会社の売上高規模が約500億ユーロとなり、本社側の方が規模が小さくなる。
“デジタルエンタープライズコンセプト”は完成に近づく
2つの社内カンパニーのうち、利益率が19%と高収益のデジタルインダストリーズへの期待は大きい。2019年4月開催の「ハノーバーメッセ2019」では、新たに「インダストリアルエッジデバイス」などエッジ領域の再強化に乗り出す方向性を打ち出しつつ、クラウドで運用する産業用IoT(モノのインターネット)のOSとなるIoTプラットフォーム「MindSphere(マインドスフィア)」と併せて、エッジとクラウドの両面から顧客にアプローチするメッセージを発信した。
藤田氏は「買収を続けてきた製造業向けソフトウェアについては“デジタルエンタープライズコンセプト”としてのパーツがそろい、ほぼ完成に近づいてきた。また、日本国内でもMindSphereの推進に向けたパートナー網を広げている。ゆっくり歩いてきた印象があるかもしれないが、この歩みを着実に進めていく」と述べている。
関連記事
- エッジ強化を再度打ち出したシーメンス、マインドスフィアは段階別提案へ
ドイツのSiemens(シーメンス)は、ハノーバーメッセ2019(2019年4月1〜5日、ドイツ・ハノーバーメッセ)において、新たに「インダストリアルエッジデバイス」などエッジ領域の再強化に乗り出す方向性を打ち出した。また産業用IoTのOSを目指すIoT基盤「MindSphere(マインドスフィア)」は段階別提案を強化する方針を訴えた。 - 未来の工場像を“描く”ことを訴えたシーメンス、マインドスフィアはVWが採用へ
ドイツのSiemens(シーメンス)は2019年4月1日(現地時間)、ハノーバーメッセ2019でプレスカンファレンスを実施し、新しい技術群によりインダストリー4.0などで描かれるコンセプトがさらに拡張していけることを訴えた。 - デジタルツインで唯一かつトップ、シーメンスだけが可能な包括的アプローチとは
シーメンスPLMソフトウェアが、米国ボストンで開催したプレス・アナリスト向けイベントの基調講演に、シーメンス デジタルファクトリー部門 CEOのヤン・ムロジク氏が登壇。バーチャルとリアルをつなぐ「デジタルツイン」を製造業が実現して行く上で、同社が唯一かつトップのポジションにあることを訴えた。 - マインドスフィアは導入が本格化、3つの戦略で普及を目指す――シーメンス
シーメンスはグローバルで発表した戦略「Vision2020+」に対し、日本での取り組みについて紹介した。 - トヨタも興味津々、シーメンスPLMの「ジェネレーティブエンジニアリング」とは
シーメンスPLMソフトウェアは、プレス・アナリスト向けイベント「Siemens Industry Analyst Conference 2018」において、同社傘下のメンター・グラフィックスのワイヤハーネス設計ツール「Capital」を中核とした車載電子/電気システム開発ソリューションを、トヨタ自動車が採用することを明らかにした。 - 産業用IoTのOS目指す「マインドスフィア」の現在地
工場など産業領域でのIoT活用には大きな注目が集まっているが、個々の企業でこれらのデータ収集、蓄積、活用の基盤を開発するには負担が大きい。こうした課題を解決する“産業用IoTのOS”を目指すのがシーメンスのIoT基盤「MindSphere(マインドスフィア)」である。開発責任者および日本での責任者の話を通じて現在地を紹介する。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.