シーメンスの産業用ソフトとMendixを統合し、企業のデジタル変革を加速する「Xcelerator」:Siemens Media and Analyst Conference 2019(1/2 ページ)
Siemens Digital Industries Softwareは、米国ニューヨークでプレス・アナリスト向けイベント「Siemens Media and Analyst Conference 2019」(2019年9月3〜6日、現地時間)を開催。基調講演に登壇した同社 社長兼CEOのトニー・ヘミルガン氏は「Xcelerate Your Digital Future」と題し、新たな統合ポートフォリオとそれを支える3つのアプローチについて紹介した。
Siemens Digital Industries Softwareは、米国ニューヨークでプレス・アナリスト向けイベント「Siemens Media and Analyst Conference 2019」(2019年9月3〜6日、現地時間)を開催。初日の基調講演に登壇した同社 社長兼CEOのトニー・ヘミルガン(Tony Hemmelgarn)氏は「Xcelerate Your Digital Future」と題し、新たな統合ポートフォリオとそれを支える3つのアプローチについて紹介した。
冒頭、ヘミルガン氏は「近年の製品開発の現場では、設計段階でソフトウェアやハードウェア、ファームウェアについても考慮する必要があり複雑性がより一層増している」と指摘。また同時に、多くの企業が開発スピードを上げ、開発ならびに生産コストを削減し、新たなビジネスモデルを構築したいと考えているとし、「これらは多くの企業で共通するテーマであるが、製品開発の複雑さに苦労している現場も少なくない。だが、こうした企業は直面する複雑性をうまく活用することで、競合優位性を発揮すべきだ」とヘミルガン氏は語る。
その際、キーとなるのがデジタライゼーションをベースとするデータ活用である。だが、単にデータをたくさん取得すればよいというわけではない。複雑さが増す製品開発、そして限られた(あるいは厳選された)データの中で、いかにして迅速な意思決定につなげられる洞察を得られるかが求められるという。
あらゆる企業のデジタライゼーションを支援する統合ポートフォリオ
これこそが競合優位性の原動力であり、これらを提供する重要な要素として、同社は「Comprehensive Digital Twin」「Personalized Adaptable/Modern」「Flexible Open Ecosystem」の3つの柱に基づくアプローチを強調。その考えを実現すべく、同社のソフトウェア、サービス、アプリケーション開発プラットフォームを1つに統合し、あらゆる企業のデジタライゼーションを支援する統合ポートフォリオとして、新たに「Xcelerator」を発表した。「われわれは全ての能力を顧客に開放する。そのためのポートフォリオがXceleratorだ。ここに含まれる最新技術を活用することで、顧客ニーズにパーソナライズされたデジタライゼーションを実現できる」(ヘミルガン氏)。
Xceleratorとは、電気設計、機械設計、システムシミュレーション、製造、運用、ライフサイクル分析のためのソフトウェアとサービスの包括的かつ統合されたポートフォリオを意味する。このポートフォリオを活用することで、設計から製造までの自動化を実現し、モデルベースのシミュレーションとテストデータを融合したパフォーマンス分析、さらにはエコシステム全体の情報をデジタルスレッドで把握、管理できるようになる。
これにより、顧客および業界固有のニーズにマッチしたパーソナライズ化が実現可能となり、ローコード/ノンプログラミングアプリケーションを開発できる「Mendix」(2018年8月に買収)によって、その機能を簡単に拡張できるとする。またこれに併せ、Mendixプラットフォームを拡張し、SiemensのIoTオペレーティングシステム「MindSphere」を活用したデジタルエンジニアリング、そしてIoT向けクラウドおよびアプリケーションサービスを含めた開発が可能になるという。
「Mendixによって、いわゆるアプリケーション開発者に限らず、現場課題を認識しているドメインユーザーであってもローコード、ノンプログラミングでMindSphereを組み合わせたアプリケーションを容易に開発できる。こうした環境は既に利用可能な状態にあり、顧客はパーソナライズされた自身の環境を構築することで、日々直面する課題に適切に対処できるようになる」と、ヘミルガン氏はMendixを活用したアプリケーション開発の優位性を強調する。
競合優位性の原動力となる3つの柱
続けてヘミルガン氏は、企業の競争優位性を生み出す原動力となるComprehensive Digital Twin、Personalized Adaptable/Modern、Flexible Open Ecosystemの3つのアプローチについてその詳細を語った。
1.Comprehensive Digital Twin
まず、Comprehensive Digital Twinについては、同社が提唱するクローズドループのデジタルツインについて紹介。これは、製造データから製品とパフォーマンスに関するデジタルツインを構築することにより、クローズドな意思決定プロセスを回せるようになり、製品設計と製造活動の双方を継続的に最適化できるようになるという考え方だ。
このアプローチを実践する取り組みとして、風力発電タービンの耐用年数予測や、HPの3Dプリンタ開発においてパーツコストの削減、開発期間の短縮、プリントヘッドの冷却効率向上に寄与した事例を紹介。後者の取り組みでは「プリントヘッドの冷却機構の流量が約22%改善し、熱を抑えることで印刷スピードが約15%速くなった」(ヘミルガン氏)という。また、5G通信向けのプリント基板製造における完全デジタル化についても事例の1つとして触れた。
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