実装技術に影響与える「5G」「自動運転」、温度管理や電源管理に注目:実装技術(2/2 ページ)
電子情報技術産業協会(JEITA) Jisso技術ロードマップ専門委員会ではこのほど「2019年度版 実装技術ロードマップ」を発行。今後実装技術に大きな影響を与える注目すべき市場カテゴリーを選び技術課題の抽出や解決策などを提言している。
注目されるサーマルマネジメントと次世代ディスプレイ
「新市場・新技術・新材料」分野では、まずサーマルマネジメントの重要性について訴えた。電子製品の傾向として小型、軽量化ニーズは引き続き高いものがある。電子製品の小型化により、回路基板の表面積が減少する。電子回路の消費電力が同じであれば熱密度が上昇するため、従来以上に高度なサーマルマネジメントが必要になる。さらに電子プラットフォーム(PF)構想に基づく製品の統合化はサイズを抑えつつ機能向上させるものであり、電子回路の消費電力は増加する傾向にある。この2つの傾向により、車載電子部品の発熱量の増加、あるいは発熱密度の増加に対して「いかに放熱性を高めるか」という点に注目が集まっている。このため、放熱や耐熱設計は設計要素として重要度が高まっている。
さらに、耐熱材料面でもさまざまな取り組みが進められている。1つの動きとして、SiC半導体デバイスがパワーデバイス分野で注目され実用化が始まっている。ただ、その実力は最大限に発揮しているとはいえないようだ。SiC半導体デバイスは250度でも動作可能といわれながら、その温度に長時間耐えられる良い耐熱絶縁材料が普及していないからだ。そのため耐熱設計の面では今後の耐熱材料の開発動向に注目しながら採用していく必要がある。
また、新たな注目技術として、マイクロLEDが挙げられている。マイクロLEDはOLED(Organic Light Emitting Diode)と同様に素子自体が発光する自発光デバイスである。LCD(液晶ディスプレイ)と比較し、バックライトやカラーフィルターが必要でないため、薄型化が容易であるなどの特徴がある。また、光効率もよく損失が少ないため輝度はLCDと同等程度だが、消費電力は半分程度となる。ただ、コスト面ではLCDよりも高額であり、コスト低減が実用化に向けて大きな課題となっている。
車載向けメタルコンポジットインダクターとリアクトル
超スマート社会の実現に貢献する電子部品としては、車載向け電子部品に関連したLCR部品(抵抗、コンデンサー、インダクター)、EMC(Electromagnetic Compatibility)対策部品、センサー、コネクター、入出力デバイスなどの動向を取り上げている。LCR部品の中では、電源用途に広く採用されるメタルコンポジットインダクターとPHVやEVなどに用いられる車載用リアクトルを注目部品として紹介した。
メタルコンポジットインダクターは、結晶系やアモルファス系の磁性粉末の表面に樹脂コーティングした材料を磁性材材料として使い、巻線した絶縁被覆銅線と一体化したインダクターだ。磁性体が巻線を隙間なく覆っていることで、従来の磁性コアと巻線で構成されるインダクターよりも小型化を実現し、優れた特性を持つ。透磁率や飽和磁束密度の特性を高める磁性粉末の組成や配合比、粉末の粒度分布などは、インダクターメーカーの企業秘密になっている。
リアクトルは、電気または電子回路にリアクタンスを導入することを目的としたコイル状の静止巻線機器である。発電電力における送電系統用の大容量のものから、通信機部品に至るものまで用途に応じてさまざまなものがある。構造的には絶縁被覆電線をコイル状に巻いたもので、コイルの内部空間に磁芯を持つものと空芯とに大別できる。チョークコイル、インダクターとも呼ばれ、使い方によって名称は変わる。磁芯を持つリアクトルは磁性体の時期飽和のため電流が大きくなるほどリアクタンスが小さくなる。
車載駆動用の電源系統ではバッテリーからモーターへ供給されるkWレベルの電気エネルギーを高効率に制御することがPCU(Power Control Unit)に求められるようになっている。また、バッテリー電圧を降圧してアクセサリー用の電源系統へ給電する機能も必要となり、昇圧回路、絶縁型DC-DCコンバーター回路、3相インバータ回路、車載充電回路などのPCUに実装されるリアクトルの総称を車載用リアクトルとしている。
リアクトルに使われる磁芯の磁性材料には鉄系合金のケイ素鋼やパーマロイ、アモルファスなどの非晶質材料、純鉄粉などが使用される。その他、Fe-Si合金粉末などの強磁性体粉末が使用される、圧粉系のダストコア、フェライト系のNi系フェライトやMn系フェライトがあり、磁気飽和を起こさせない適用回路の励磁条件により使い分けられている。現在の車載用リアクトルの主流である圧粉磁芯は個々の磁性体の粒子表面に絶縁コーティング処理を施した磁性粉末を高圧プレスした成形体で、互いの粒子は金属結合していない。粒子表面の絶縁被膜によって構造的に電気抵抗を高めることで、特に数十kHz以上の高周波領域において優れた交流磁気特性を示すとしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 日本発を世界に、実装機メーカー20社がスマート工場の新通信規格発表
日本ロボット工業会(JARA)とSEMIは2018年6月6日、SMT(表面実装)装置業界における独自のM2M連携通信規格を発表し、国際規格として普及を推進していく方針を示した。 - FUJIヤマ発パナJUKIをつなぐ、スマート工場向け通信規格「SEMI SMT-ELS」が始動
日本ロボット工業会(JARA)とSEMIは、「JISSO PROTEC 2019(第21回実装プロセステクノロジー展)」において、特別展示となる「ELS対応実装機デモンストレーション」を披露した。 - 半導体露光機で日系メーカーはなぜASMLに敗れたのか
法政大学イノベーション・マネジメント研究センターのシンポジウム「海外のジャイアントに学ぶビジネス・エコシステム」では、日本における電子半導体産業の未来を考えるシンポジウム「海外のジャイアントに学ぶビジネス・エコシステム」を開催。半導体露光機業界で日系企業がオランダのASMLに敗れた背景や理由について解説した。 - ナノスケールのちりの影響を抑制、半導体製造装置が目指すIoT活用
「SEMICON Japan 2016」のIoTイノベーションフォーラムで登壇した東京エレクトロン執行役員の西垣寿彦氏は、半導体製造における“ちり”の管理と、IoTを使った生産性向上の取り組みについて紹介した。 - 72台の装置を半日で稼働、日本発「ミニマルファブ」が変える革新型モノづくり
産総研コンソーシアム ファブシステム研究会などは「SEMICON Japan 2016」で、「ミニマルファブの開発成果を発表。同研究会などが推進するミニマル生産方式による製造装置「ミニマルシリーズ」72台を設置し、半導体製造工程のほとんどをカバーできるようになった成果をアピールした。 - 日本の「モノづくり革新」は実装技術が支える、国内大手の最新機種が一堂に
実装技術の展示会「JISSO PROTEC 2013(第15回実装プロセステクノロジー展)」では、「高品質」、「省人化」、「自動化」などをキーワードに最新の実装機や検査機、生産管理システムなどが展示された。