日本発を世界に、実装機メーカー20社がスマート工場の新通信規格発表:スマートファクトリー
日本ロボット工業会(JARA)とSEMIは2018年6月6日、SMT(表面実装)装置業界における独自のM2M連携通信規格を発表し、国際規格として普及を推進していく方針を示した。
日本ロボット工業会(JARA)とSEMIは2018年6月6日、SMT(表面実装)装置業界における独自のM2M連携通信規格「JARAS1014(ELS通信仕様)」を発表し、国際規格として普及を推進していく方針を示した【訂正あり】。
【訂正:2018年6月11日18時 初出時のタイトルの一部に誤解を招く表現がありましたので訂正させていただきます】
工場全体の最適化に貢献する実装機の通信規格
プリント基板に部品や半導体などを実装する表面実装機や印刷機、外観検査装置など、電子回路基板製造ラインの機器は、日系企業が世界的にも高いシェアを持つ製品領域である。しかし一方で、ライン構築には複数メーカーの装置が必要となり、それぞれの通信方法が統一されていないという問題を抱えていた。そのため、ライン全体での一貫した情報管理に大きな手間とコストがかかり、ユーザーの負担となっていた。
一方で、ドイツのインダストリー4.0をはじめとし、スマートファクトリー化などで機器単体だけでなく、生産ライン全体や工場全体での最適化が問われるようになってきていた。
そこで、これらの状況に危機感を持った実装機関連メーカー20社が集まって2017年5月ごろから、生産ライン全体の最適化に向けたM2M通信規格構築に向け、話し合いを開始した。その後、JARAの協力を受けて2017年10月にはJARA内に「実装機器通信規約標準化分科会」を発足。そこから半年以上をかけて規格をほぼまとめ、今回「JARAS1014(ELS通信仕様)」を発表する流れとなった。
取り組みの背景について、実装機器通信規約標準化分科会会長のFUJI(2018年4月に富士機械製造から改称) ロボットソリューション事業本部 第一機械技術部 技術規格課 課長の粟生浩之氏は「電子回路基板製造ラインの情報を取得し工場の稼働率向上や生産性向上に取り組むニーズについては、主要メーカーは大半が感じていた。しかし一方で、全世界で30%近くのシェアを持つ企業が複数存在する状態で、各企業が現在使っている通信規格に合わせるということは難しかった。そこで現状での個々の課題なども踏まえて、これらを共通して解決する新たな規格を作ることを決めた」と述べている。
分科会に参加した企業は、オムロン、小松電子、サキコーポレーション、千住金属工業、タムラ製作所、ナガオカ製作所、名古屋電機工業、日本ミルテック、パナソニック、FUJI、マイクロニックテクノロジーズ、マランツエレクトロニクス、武蔵エンジニアリング、ヤマハ発動機、ワイエス、CKD、JUKI、KOH YOUNG TECHNOLOGY、Parmi、Test Research(50音順)の20社である。
新たな付加価値は今後、海外にも展開へ
新規格はイーサネットベースの通信規格で、以下の3つの機能を保有する。
- SMT実装ラインにおけるネットワークを使用したM2Mの基板搬送(PLC考慮)
- SMT実装ライン全体の生産機種切り替え
- M2Mによる検査結果情報の受け渡し
「基本的には各企業が提供していた情報収集の仕組みに対して新たな価値のようなものはまだない。まずは『つながる』ところからだ。今後は新たな価値創出などにも取り組んでいく」と粟生氏は機能について語る。
また、SEMIとも協力し、インダストリー4.0に最適なフローショップ型製造ライン用のM2MスタンダードとしてSEMIが開発した「SEMI A1 HC」規格とも連携。同規格の応用規格としての位置付けで、国際展開を図っていく方針である。「SEMI A1 HC」は製造ラインに沿って、隣接する装置の間で設定情報や処理のフィードバック情報を交換する汎用通信機能を備えており、これはホストと装置との間の通信にも応用できるとしている。
粟生氏は「日系企業のシェアが高いとはいえ、日系企業の中でだけ閉じこもっているのでは国際規格には成り得ない。SEMIとの協力で欧米や中国などにも活用を働きかけ、日本発の真の国際標準となるようにしていきたい」と抱負を述べている。
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