デジタルツインで改善を加速させるシーメンスのインダストリー4.0モデル工場:スマート工場最前線(3/3 ページ)
ドイツのモノづくり革新プロジェクト「インダストリー4.0」の旗手として注目を集めるシーメンス。そのシーメンスの工場の中でスマートファクトリーのモデル工場として注目を集めているのがアンベルク工場である。最先端のスマートファクトリーでは何が行われているのか、同工場の取り組みを紹介する。
28年間で生産性は13.5倍に、デジタル化で改善スピードは加速
EWAでは1991年からさまざまな生産性改善に取り組みを進めてきた。2018年までの28年間で、生産スペースや人員がほぼ変わらない中でも、生産性を約13.5倍に拡大できたとする。これらの取り組み全てにIoTなどのデジタル技術が関係するわけではないが「デジタル技術を本格採用した2016年以降、生産性改善のペースは大きく上がっている。従来比で1.3〜1.4倍になった」(シーメンス)という。
生産性に加えて、トレーサビリティーが確保できることから品質面でも改善が進んでおり、2018年には初めて10dpm(defect per million:100万個当たりの不良箇所の数)以下となり、99.999%以上のプロセス品質を確保できたとしている。
自動化率は約75%、人手による作業も25%は残る
実際の製造ラインは、基板実装ラインと組み立てラインに分かれる一般的な電子製品の工場である。基板実装については、ほぼ無人で製造を行う。テープフィーダーなどのサブアセンブリーなどについては、自動化しているものもあれば、人手で行う部分もあるとしている。組み立てラインについても、人手で行う部分とセミオート化している部分などが存在する。「自動化率は75%程度だ」(シーメンス)としている。
EWAは世界でも注目されるスマート工場だが、実装ラインだけを見た場合、日本の工場とそれほど大きな違いはない。そういう意味で重要なのは、バックヤードのデータ基盤の領域である。生産情報や設計情報の全てを一元的につないでいく中で、従来は見えなかった部門間のプロセス改善や品質改善などが進むことになる。日本では部門間の壁が高く、これらのシステム連携や一元的なデータ基盤の構築がまだまだ進んでいないが、この違いをどう受け止め、判断するかが重要である。
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