高額投資なしで大規模解析の計算時間が9分の1に! ケーヒンのクラウドCAE活用:CAE事例(3/3 ページ)
「ANSYSものづくりフォーラム in 東京2019」におけるケーヒンの講演「クラウドを用いたCAE開発工数/環境改善の提案」の内容を紹介する。
解析規模の拡大、複雑化に対応するためのクラウド
一般的に、解析規模が拡大、複雑化していくと、解析担当者を増員する、解析時間を短縮させる(計算速度向上)といった取り組みが行われる。また、保存データもどんどん増えていくため、ワークステーションの台数やCAEソフトウェアのライセンス不足、計算リソース不足、データ保存サーバの容量不足といった、さまざまな“不足”が発生してしまう。
ケーヒンでも「技術者が使いたいときにワークステーションが空いていない」「ライセンスが足りなくてCAEソフトウェアが使用できない」といった事態に陥ることがあった。また、詳細に解析を実施したい場合、社内のワークステーションの処理能力では不十分で、計算時間の遅延が起こり、開発期間にも影響を及ぼしていたそうだ。他にも、新人の操作教育で使いたいと思った時点で、使用できるライセンスやワークステーションがないといった事態も発生していたという。
こうした課題を解決するためには、ソフトウェアとハードウェア、双方の高額な投資が必要となる。しかし、ハイスペックな大規模計算が常に必要なわけではないことや、繁忙期ではない時期を想定すれば、潤沢な投資を行ったとしても、結果的に無駄が生じてしまう。そこで、ケーヒンが目を付けたのが“クラウドCAE”だった。ケーヒンでは、クラウド環境にアプリケーションやデータを集約。技術者が扱う端末からクラウドにある仮想マシンにアクセスし、クラウドにあるCAEソフトウェアを使う形とした。クラウドサービスであると、計算リソースは従量に応じて課金される。
クラウドサービスにより、ハイスペックなワークステーション相当のハードウェア環境が利用できるようになり、かつその時々の需要に応じて計算リソースの量を調整することが可能になった。その結果、大規模解析の計算時間が、社内マシンを利用していた当時と比較して約9分の1に短縮でき、しかも高額な設備投資をせずに済んだという。
その他、マシンの設置や工事についての検討が不要であることや、電気代の節約につながること、そして「CAEを使いたい時に使える」ようになり、ストレスが減ったことをメリットに挙げる。
現在は用途や解析規模に応じて、社内インフラとクラウドサービスを使い分けている(ハイブリッド運用している)ということだ。また、有本氏は「画面共有の機能を利用した、ユーザーサポートが利用できようになったらうれしい。さらにマウスの遠隔操作でサポートしてくれると助かりそうだ」と、クラウドCAEサービスへの要望も述べた。
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