NEC、熟練者の行動から意思決定モデルを学習するAIを開発:製造ITニュース
NECは、行動履歴データから熟練者の認知、判断に基づく意図を意思決定モデルとして学習し、高度なスキルが要求される業務を大幅に効率化するAI技術を開発した。
NECは2019年7月17日、行動履歴データから熟練者の認知、判断に基づく意図を意思決定モデルとして学習し、高度なスキルが要求される業務を効率化するAI(人工知能)技術を開発したと発表した。営業活動やプラント運転などの複雑な意思決定が必要な業務領域、自動運転やロボット制御などの人の判断を物理的に再現する領域への適用が可能だと見込んでいる。
この技術では、最適行動から報酬を推定する逆強化学習のフレームワークを同社独自のアルゴリズム、異種混合学習技術で拡張した。人手では定式化が困難な意思決定問題であっても、熟練者の行動履歴データから複雑な意思決定を複数の意図に分解して学習。熟練者と同等の判断を迅速かつ自律的に導き出す。
さらに、行動履歴データから意思決定モデルを学習すると同時に、制約条件も学習。熟練者が選択しない行動は避ける制約、常に行っている行動は守るべき制約と見なす。これにより、熟練者が無意識に行っている安全で信頼性の高い判断と同等の意思決定を可能にした。
また、一般的に逆強化学習に必要とされる状態遷移モデルや、学習結果の正誤を確認する実験機やシミュレータがなくても、熟練者と非熟練者の行動履歴データからのサンプリングで意思決定モデルを評価できるモデルフリー方式も開発した。この方式を採用したことで、既存の逆強化学習に対して学習効率が100倍向上したという。
NECはこの技術をTV放送局の広告スケジューリング業務に適用し、実データを使った性能評価を実施したところ、経験豊富な熟練者と同等レベルの意思決定を10倍以上のスピードで実行できたとしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 少ない学習データでも活用できる3つの機械学習技術を開発
NECは、機械学習技術で必要とされる大量のデータが得られない状況でも活用可能な3種類の機械学習技術を開発した。同技術により、従来の機械学習技術では効果が十分に発揮できないような場面でも、機械学習の活用が期待される。 - 質量分析計のピークピッキングをAIで自動化、島津製作所と富士通が共同開発
富士通は、同社ユーザーイベント「富士通フォーラム2019 東京」の内覧会において、「世界初」(同社)となる質量分析計の測定データ解析用AI(人工知能)を披露した。 - AIで製鉄所の安全を守る、人物検知でラインの自動停止も
JFEスチールは、NECおよびNECソリューションイノベータとともに、AIによる画像認識技術を製鉄所の安全行動サポートに活用する技術を開発した。 - 輸入ワインも自動検査で生産性3倍、画像処理技術を活用
アサヒビールとNECは画像処理技術を活用した「輸入ワイン中味自動検査機」を共同開発した。同検査機の導入により、人が目視で実施している輸入ワインの検品作業の品質を維持しつつ、作業を効率化し最適な品質管理体制を目指す。 - モノづくりのディティールにまでデジタルを、自ら手も動かすNECが描く将来像
NECは「第30回 設計・製造ソリューション展(DMS2019)」(2019年2月6日〜8日、東京ビッグサイト)において、次世代のモノづくりを具現化するコンセプト「NEC DX Factory」を基に関連技術を紹介した。 - 熟練技術者のスキルを8時間で獲得、ファナックが機械学習ロボットを披露
ファナックは「2015 国際ロボット展」で、Preferred Networks(PFN)と提携して開発している産業用ロボットへの機械学習の適用事例を披露した。機械学習により熟練技術者が数日間かかるティーチングの精度を、8時間で実現したという。