3D CADの導入と社内展開を助け、その効果を最大化するための環境づくり:“脱2次元”できない現場で効果的に3D CADを活用する方法(3)(3/3 ページ)
“脱2次元”できない現場を対象に、どのようなシーンで3D CADが活用できるのか、3次元設計環境をうまく活用することでどのような現場革新が図れるのか、そのメリットや効果を解説し、3次元の設計環境とうまく付き合っていくためのヒントを提示します。今回は「3次元のメリットを最大限に引き出すために必要な“環境づくり”」にフォーカスします。
3D CAD活用を社内に広めていく上で重要なこととは?
3D CAD活用を社内に広めていく上で重要なのは、“皆が喜ぶことをする”ことです。3D CAD導入のメリットをはっきりと示さないままの状態で、業務量が増えてしまうのでは? と現場の設計者を不安にさせてしまうことは絶対に避けてください。2次元ではなく3次元で設計すれば、現場の作業がより楽に、より分かりやすくなるということを、現場に理解してもらうことに努めましょう。“今、進めている3D CAD導入が、現場の皆が喜ぶことにつながっている”という認識を広めることが何よりも大切です。
IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)、ロボットなどが活躍するインダストリー4.0の時代では、人はより人と向き合い、人が喜ぶことを考え、行動していくことが何よりも重要です。そして、そのためのツールの一つとして3D CADがあり、そこから生み出される3Dデータが役立つと筆者は信じています。
3次元のメリットは、誰でも形状が理解できるという点です。そのメリットを生かし、現場でより分かりやすいモノづくりができるようになれば、現場の人たちもきっと喜んでくれるはずです。3次元の良さをしっかりと理解してもらい、不安を払拭(ふっしょく)する努力を惜しんではなりません。
今や3Dデータは、Webブラウザやタブレット端末のアプリなどを通じて確認できるようになり、設計者だけが扱う特別なものではなくなりつつあります。また、3D CADで設計した3Dデータを活用し、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)環境で、現場作業のトレーニングや作業検証などを行っている企業もあります。AR/VRの世界は、ディスプレイの中の表現とは異なり、3Dデータの形状やデザインをリアルなスケール感で確認でき、利用イメージに近い形で作業性や操作性をチェックすることも可能です。
繰り返しになりますが、設備中心の考え方ではなく、人を中心に、人が喜ぶことをするという“モノづくりで最も重要なこと”を忘れることなく、ツール導入やプロセス改善を進め、全社を挙げての3次元活用に取り組んでいただきたいと思います。設計者にとって働きやすい環境が構築できれば、その効果はより良い製品づくりにもつながり、われわれの暮らしや社会もより豊かなものへと変わっていくはずです。 (次回に続く)
筆者プロフィール
小原照記(おばら てるき)
いわてデジタルエンジニア育成センターのセンター長、3次元設計能力検定協会の理事も務める。3D CADを中心とした講習会を小学生から大人まで幅広い世代の人に行い、3Dデータを活用できる人材を増やす活動をしている。また企業の困り事に対し、デジタルツールを使って支援している。人は宝、財産であると考え、時代に対応する、即戦力になれる人財、また、時代を創るプロフェッショナルな人財の育成を目指している。優秀な人財がいるところには、仕事が集まり、人が集まって、より魅力ある街になっていくと考えて地方でもできること、地方だからできることを考えて日々活動している。
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