“IoTを超える”ソラコム、ダイハツは何のために採用したのか:Discovery 2019(2/2 ページ)
ソラコムが年次ユーザーイベント「Discovery 2019」を開催。基調講演に登壇した同社社長の玉川憲氏は、ユーザー数が1万5000社、IoT向けデータ通信サービスの回線契約数が100万を突破したことなどを報告した。また、ダイハツ工業 くらしとクルマの研究所 所長の生駒勝啓氏が登壇し、同社におけるソラコムの採用事例を紹介した。
自動車販売店の営業マンと顧客の間に存在する“ギャップ”とは
この基調講演の中で、ソラコムユーザーの1社として登壇したのが、ダイハツ工業 くらしとクルマの研究所 所長で役員の生駒勝啓氏である。同社では、工場出荷から納車まで、新車トラッキングにより販売店と顧客をつなぐための実証実験にソラコムを採用した。
生駒氏は「販売店の営業マンにとって関心のピークは販売契約を結んだとき。それ以降は契約を結んだ顧客への関心はどうしても下がってしまう。しかし顧客からすれば、契約が終わってクルマが納車されるまで関心はどんどん高まっていく。このギャップの解決策としてまず挙げられるのは納車を短くすることだ。しかしわれわれは、大胆な仮説として、顧客が待たされている間も、購入するクルマの居場所を知らされ、徐々に近づいてくることが分かればワクワクしてもらえるのではないかと考えた」と語る。
そのために導入したのが、SORACOM Air for セルラーとGNSS(全地球航法衛星システム)で位置情報を1cm精度で把握できるシステムだ。まずは実証実験として、九州中津工場の工場内から港まで3kmの区間で、新車とそのけん引車の位置情報をcm精度で測位し、自動運転によって搬送するシステムを開発した。
次に、港から荷揚げした車両の位置情報については、静岡県内の販売店の車両在庫管理システムに活用した。これにより、専用Webアプリから車両の位置情報を確認できるようになる。「この情報を活用すれば顧客向けのスマホアプリで納車日のカウントダウンが行えるようになる。ワクワクがピークになるころに、カー用品の提案を行えば顧客の心に響くだろう。このようにIoTを使ってラストワンマイルをつなげる取り組みを進めている」(生駒氏)という。
なお、これらの取り組みはあくまで実証実験レベルであり、実際にダイハツ工業の販売店網に採用されるには幾つものハードルがある。生駒氏は「それでも、IoTによる挑戦で営業を一新する可能性は見えた。今後もラストワンマイルの挑戦を続けていきたい」と述べている。
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