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ファブラボ渋谷はこうして生まれた――日本に根付くプラグイン型ファブラボとは日本におけるファブラボのこれまでとこれから(2)(4/4 ページ)

日本で3番目となる「ファブラボ渋谷」の立ち上げを経験し、現在「ファブラボ神田錦町」の運営を行っている立場から、日本におけるファブラボの在り方、未来の理想形(これからのモノづくり)について、「これまでの歩み」「現在」を踏まえつつ、その方向性を考察する。今回はファブラボ神田錦町の前身であるファブラボ渋谷の生い立ちとこれまでの歩みを取り上げる。

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既存の仕組みを拡張するプラグイン型ファブラボ

 これまで紹介してきた通り、“地域の図工室、実験室”として始まったファブラボ渋谷ですが、いくつかのご縁をいただき、外部の工房を企画したり、その場を円滑運営したりするような事業に従事しています。その例をいくつか紹介しましょう。

デジタル加工工房LOFT&Fab

 渋谷ロフト店および銀座ロフト店にある「LOFT&Fab」。ここでは、ロフトの店頭に並ぶ商品をお客さま自身がカスタマイズできます。名前やメッセージの刻印、スマホに入っている写真を使ったスマホケースづくり、結婚式のウエルカムボードづくりなど、毎月500組を超えるお客さまに利用していただいています。2018年には「グッドデザイン賞」を受賞しました。

 店頭に並ぶ商品を一つ一つ“カスタマイズ”することで、大量生産の商品を他にない「世界に1つだけの商品」へと昇華しています。この取り組みは「ないものは自分たちで作る」というファブラボのコンセプトを社会実装する1つのプロジェクトになっています。また近年、生活消費財の大量廃棄が社会問題となっています。そんな中、少しでも商品を長く使うためのきっかけ作りの一案として、このカスタマイズ加工が効果を発揮できるのでは? と考えています。

カインズ工房

 ホームセンターの中に、デジタル加工工房を企画しました。ホームセンターでは一般的に、ノコギリや電動ドリルなどのアナログ工具を貸し出してくれますが、それに加えて、レーザーカッターや3Dプリンタの時間貸しサービスを受けられます。また、DIY向け木板素材を販売するホームセンターと相性のよい機材として、「ショップボット」という大型木工切削機を導入しています。

クリエイティブラウンジ

 企業内における新規事業創発のためのスペースに、デジタルファブリケーション機材を並べています。ここでは、アイデア発想からプロトタイピングまでを、同じ場所で実行できます。試作開発のスピードアップやアイデアのタネ育成に効果を発揮しています。

 これまで紹介したように、既存の仕組みにファブラボの要素を組み合わせる事例が日本国内では多く見られます。いわゆる“機能拡張”そのものであり、久保田氏が名付けたプラグイン型ファブラボが、日本国内では受け入れられていると考えています。 次回に続く

筆者プロフィール

梅澤陽明(うめざわ ひろあき)

1984年神奈川生まれ。一般社団法人デジタルファブリケーション協会 代表理事。ファブラボ神田錦町 チーフディレクター。大手建設機械メーカー設計部にて、超大型ショベルの設計開発に従事。在職中に「ファブラボ」活動を知り、起業を決意。ファブラボジャパンのメンバーとして、ファブラボ鎌倉の立ち上げサポートの後、ファブラボ渋谷をスタートさせる。運営メンバーとして現職。自身の専門から、数あるデジタルツールの中でも、3Dモデリングを活用したエンジニアリングや、3Dプリンティングを専門とする。デジタルものづくり手法を組み込んだ試作開発や、多品種小ロットプロダクトの企画製作に取り組みながら、ファブラボで語られる思想を社会に溶け込ませることを目指している。



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