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ファブラボの外で広がるモノづくりの輪、特色あふれる都内のメイカースペース日本におけるファブラボのこれまでとこれから(3)(1/3 ページ)

日本で3番目となる「ファブラボ渋谷」の立ち上げを経験し、現在「ファブラボ神田錦町」の運営を行っている立場から、日本におけるファブラボの在り方、未来の理想形(これからのモノづくり)について、「これまでの歩み」「現在」を踏まえつつ、その方向性を考察する。今回は“ファブラボ以外”のモノづくりスペースの事例として、都内で誕生した代表的な施設について紹介する。

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 これまで2回にわたり、世界に広がるモノづくりネットワーク「ファブラボ(FabLab)」について紹介してきました。2002年に米国ボストンで生まれたファブラボの波は、その後世界中に広がり、2011年に日本に到達。鎌倉とつくばで国内最初のファブラボがオープンし、その後、国内18拠点に広がっています。

 しかし、2011年以降の動きはそれだけではありませんでした。ファブラボの広がりと並行して、多様なモノづくりスペースがオープンする動きが日本各地で起こったのです。実はこうした動き、他の国ではあまり聞くことのない日本独特の発展であり、諸外国からも興味深く見られているのです。

 日本全国でこうした“ファブラボ以外”のモノづくりスペースの動きが生まれているのですが、ここではその代表として、都内のスペースを中心に取り上げたいと思います。

作る場所の拡大

 ファブラボを利用する属性に「メイカー」と呼ばれる人たちがいます。この言葉は、2012年に日本でも発刊されたクリス・アンダーソン著『MAKERS』で定義されました。自宅やコワーキングスペースで製作活動をして、その活動をオンラインコミュニティーで発信したり、成果物を販売したりし、さらには資金調達をして起業を目指すような人たちを指します。“21世紀型の発明家”といえるかも知れません。

  • 3Dプリンタやレーザーカッターのようなデジタル工作機械がデスクトップに置かれるようになり、専門知識を持たない人たちでもモノをデザインできるようになった
  • デザインされたアイデアをオンラインのコミュニティーで公開しながら、オープンイノベーションによって世界中の仲間と共創できるようになった
  • 世界中にある製造ソーシング会社をネット経由で利用すれば、そこで生まれたアイデアをクリック1つで低価格、小ロット生産できるようになった

    これにより、誰もが製造業の起業家になれる時代となり、製造業が民主化された。そのため、古い大量生産モデルでは作れない、世界が望む製品を作れるようになったとしている。

    引用:Wikipedia メイカームーブメントで実現可能になったこと

 一般の方々が工作機械にアクセスする機会は、これまでほとんどありませんでした。しかし、2000年代以降の3Dプリンタやレーザーカッターなどに代表されるデジタル工作機械の低価格化やコンパクト化、そして、デジタル工作機械を利用できるコワーキングスペースや公共施設などの登場により、自身で所有することを含め、工作機械へのアクセスが容易になりました。アイデアがあればすぐに具現化できる環境が身近なところに増えてきたのです。

 こうした「作る」という行動が身近になった社会変化のことを「モノづくりの民主化」と呼びます。民主化を後押しした1つはファブラボにあるといえますが、それに限らず、「ファブスペース」「メイカースペース」「テックスペース」「ハッカースペース」などと呼ばれる、一般向けのクリエイティブな工房が増えたことにより、それが加速したといえます。

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