ファブラボの外で広がるモノづくりの輪、特色あふれる都内のメイカースペース:日本におけるファブラボのこれまでとこれから(3)(2/3 ページ)
日本で3番目となる「ファブラボ渋谷」の立ち上げを経験し、現在「ファブラボ神田錦町」の運営を行っている立場から、日本におけるファブラボの在り方、未来の理想形(これからのモノづくり)について、「これまでの歩み」「現在」を踏まえつつ、その方向性を考察する。今回は“ファブラボ以外”のモノづくりスペースの事例として、都内で誕生した代表的な施設について紹介する。
ファブラボが日本で立ち上がり、『MAKERS』が国内で発刊された2012年以降の都内の代表的なスペースを以降で紹介します。
2012年
3月:FabCafe Tokyo(渋谷)
連載第1回にも登場した、ファブラボ思想から生まれた「FabCafe」。“情報の発信地”といわれる渋谷でのオープンは、当時から多くの注目を集めました。「レーザーカッターが使えるカフェ」という言葉は、多くのメイカーの心をつかんだだけでなく、流行に敏感な渋谷の若者たちの間にも広がりました。カフェメニューとともに並ぶ「レーザーカット」という文字は、多くの来店者の心に衝撃を与えたことでしょう。
現在は、レーザーカッターだけではなく、3DプリンタやUVプリンタ、ミシンなどのデジタル工作機械を体験できます。例えば、レーザーカッターは800円/10分から使用できます。何を作ろうか? と悩む人に向けた「簡単Fab体験キット」も用意されています。都内で最も気軽に入れるデジタル工房といえるでしょう。
2013年
6月:coromoza(原宿)
ファッションのためのコワーキングスペースです。オープンなスペースで製作活動が行え、洋服づくりに必要な道具を自由に利用できます。また洋裁教室や、クリエイター、服好きが集まり交流できるイベント、新しい発想が生まれるような勉強会も開催されています。
オリジナル生地プリントやTシャツプリント、刺しゅうなど、ファッションに特化した製作スペースです。
7月:HappyPrinters(南青山)
「世界一ワクワクする印刷工場」を掲げる、印刷に特化したスペースです。オリジナル生地プリントやターポリンプリントができるラテックスプリンタ、アクリルやポリカにオリジナルプリントできるUVプリンタが店内に並んでいます。また、治具製作やサイズカットなどのためのレーザーカッターも設備されています。
加えて、オンライン完結型の「HappyFabric」という生地印刷サービスもスタートしており、自宅や職場にいながら最短1mからオリジナル生地を発注できます。オープン当初から原宿で営業していましたが、2019年6月から南青山に移転しました。
9月:Makers' Base Tokyo(目黒)
「モノ作りの夢をかなえる、秘密基地へようこそ」という温かいメッセージで迎えられるこの場所は、プロから初心者まで、作りたい人から作ってもらいたい人までを柔軟にカバーしている施設です。
この場所には、木工、金工、陶芸、縫製、テキスタイル、デジタル加工など、100種類を超える機器や道具が備えられています。専門スタッフによるトレーニングを受ければ、誰でも何でも使うことが可能で、大きさ、重さ、臭い、形、音などを気にせず、モノ作りに没頭できます。また、作ったモノをWeb(ECサイト)などの新しい販路で販売するサポートも受けられます。
プロとして「モノ作り」をなりわいとする道を切り開きたい人だけでなく、仕事終わりに立ち寄り、純粋にモノ作りを楽しみたい人、気軽にモノづくりを始めてみたい人まで、柔軟に受け入れてくれる充実した環境です。
11月:デジタル加工工房LOFT&Fab(渋谷)
渋谷ロフトの附帯サービスとしてスタートした工房です。レーザーカッターやUVプリンタが並ぶこの場所では、ロフトで購入した商材に“チョイ足しカスタマイズ”ができます。名入れ、写真印刷、メッセージ刻印、イラスト印刷など、オリジナルギフトづくりを中心に利用されています。1点から作れるので、特別な贈り物に最適です。
工房には専任のプロスタッフが常駐しており、カスタマイズ相談やデータ製作相談も可能です。
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