連載
ファブラボ渋谷はこうして生まれた――日本に根付くプラグイン型ファブラボとは:日本におけるファブラボのこれまでとこれから(2)(3/4 ページ)
日本で3番目となる「ファブラボ渋谷」の立ち上げを経験し、現在「ファブラボ神田錦町」の運営を行っている立場から、日本におけるファブラボの在り方、未来の理想形(これからのモノづくり)について、「これまでの歩み」「現在」を踏まえつつ、その方向性を考察する。今回はファブラボ神田錦町の前身であるファブラボ渋谷の生い立ちとこれまでの歩みを取り上げる。
ファブラボ渋谷で実施した製作プロジェクト
2013年のオープンからこれまでに、ファブラボ渋谷ではさまざまな製作プロジェクトが実施されました。その一例を紹介します。
作品名:月の満ち欠け時計 ユーザー:発明家
レーザーカッターで切り出されたアクリルパーツと、時計のムーブメント、レゴブロックを使って作られた月の満ち欠けを表現する時計。レーザーで彫刻した模様に蓄光塗料を埋めて仕上げたり、時計のムーブメントを月の満ち欠けに変換する機構として応用したりするなど随所に工夫が見られます。「作りたい」という思いはあれど、それを実現できる場所がなく、ファブラボにたどり着いたそうです
作品名:エジプトのベッド脚の複製 ユーザー:学者
エジプトで発掘された古代のベッドを復元するプロジェクト。現地で3Dスキャンされたデータを持ち込み、CNCルーターを使い切削加工で部品を復元しました。全ての部品を削り出した後、組み立てをして、製品試験さながらの調査が行われました。遠隔地をつないだデジタルデータのやりとりはファブラボらしいプロジェクトでした
作品名:神像の修復とデータ収蔵 ユーザー:学者
平安時代に作られた神像を3Dスキャンし、デジタルデータ収蔵と荒廃部位の修復および3Dプリンティングをして復元するプロジェクトです。ファブラボ神田錦町の機材を持ち込み、現地での3Dスキャンを実施しました。取得したデータは、大学内で学術研究用途に活用されています
作品名:西洋美術館パズル ユーザー:建築家
建物の形を忠実に模した立体パズルを製作した事例です。組み立て方法を試行錯誤しながら、体験者が楽しめるような仕掛けを作り上げました。同館の記念イベントに出品。製作者自らが機材を使うことで、より精度の高い理想の追究が進められました
ファブラボ渋谷の工房を飛び出したプロジェクト
また、ファブラボ渋谷の工房を飛び出したプロジェクトもこれまで実施してきました。
「モバイルファブラボ」では自動車に機材を積み込み各地を巡業。学校のグラウンドに仮設ファブラボを立ち上げ、デジタルものづくりの体験プログラムを実施しました。またハイブリッドカーの電気を活用する試みでもあり、コンセントのない場所でも自動車からの給電で、各種機材を運用しました
ファブキャラバン@経済産業省。経済産業省などの各省庁が毎年夏に行う「子どもデー」への出展の様子。モバイルファブラボを省内に持ち込み、レーザーカッターや3Dプリンタをハイブリッドカーで運用した事例です。子供たちとデジタルものづくりを楽しみました
なお、渋谷の街開発の一環で、2017年6月に神田錦町(千代田区神保町)へと移転することとなり、現在はファブラボ神田錦町と名前を変えて運営しています。
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