ファブラボ渋谷はこうして生まれた――日本に根付くプラグイン型ファブラボとは:日本におけるファブラボのこれまでとこれから(2)(2/4 ページ)
日本で3番目となる「ファブラボ渋谷」の立ち上げを経験し、現在「ファブラボ神田錦町」の運営を行っている立場から、日本におけるファブラボの在り方、未来の理想形(これからのモノづくり)について、「これまでの歩み」「現在」を踏まえつつ、その方向性を考察する。今回はファブラボ神田錦町の前身であるファブラボ渋谷の生い立ちとこれまでの歩みを取り上げる。
ファブラボ推奨機材とファブマスター
ここで、ファブラボに設置されている代表的な機材を紹介します(ファブラボ推奨機材より)。
レーザーカッター
レーザー光を用い、対象物を焼き切ったり、焼き焦がしたりして彫刻表現をします。加工できる素材は、紙、布、木材、アクリルなどです。ファブラボの機材の中で、最も利用率の高い機材です。一般的な直線や曲線加工だけでなく、細かい操作ができるため、精巧な紙細工などの職人的表現ができるのが特徴です。
3Dプリンタ
ファブラボに備えられているのは、熱溶解積層式と呼ばれる3Dプリンタであることがほとんどです。ごく一般的な3Dプリンタであり、フィラメントと呼ばれる、リールに巻かれた1.75mm径の樹脂を溶かしながら、1層ずつ積上げていき立体物を造形します。樹脂素材は、大きくABS素材とPLA素材に分類されます。特に後者は、「生分解性プラスチック」と呼ばれ、環境を考慮した素材が原料となっています。またこの他に、光造形式印刷機や、インクジェット式印刷機などの種類があり、機材として所有するファブラボがいくつかあります。
CNCルーター
ビットと呼ばれるドリル刃を高速回転させながら、材料の切削加工を行う機械です。コンピュータで作られたデータ通りに材料を立体的に切削できます。3Dプリンタが「加算加工」と表現されるのに対し、切削は「減算加工」といわれます。
電子工作ツール
はんだごてや測定器など、電子制御パーツを製作する際に必要となる機材類です。近年プログラミング教育で注目を集める分野でもありますが、現代のモノづくりをする上で、こうした機材は必要不可欠です。
刺しゅうミシン
コンピュータで作ったデータの通りにミシンが自動制御され、刺しゅうを縫い上げます。一般的なミシンとしての利用もできる機械です。ファブラボでは「実験的」に機材利用することも多く、例えば導電糸(電気を通す糸)を縫い、やわらかい電子回路を作るようなプロジェクトもあります。
その他、数種類の工作機材を合わせて「ファブラボ標準機材」と呼んでいます。
ファブラボのいわゆる工房スタッフは「ファブマスター」と呼ばれており、こうした機材を自在に横断しながら、製作の最適解を導き出せる能力を有しています。ちなみに、このポジションを世界的には「グル」と呼んでいますが、日本国内では悪いイメージが先行するため「マスター」としています。また、マスターにはユーザー同士をつないだり、組織の外の方々と自分たちのラボをつないだりする、コミュニケーション能力が強く求められます。「作るスキル」と「つなぐスキル」の2つを持って、初めてファブマスターといえるのです。
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