完全冗長EPS、次世代カメラやミリ波が2019年から量産、ボッシュの自動運転戦略:自動運転技術(2/2 ページ)
ボッシュは2019年6月25日、東京都内で年次記者会見を開き、2018年の業績と2019年以降に向けた取り組みについて発表した。
バレーパーキングを構内物流に応用
2019年中に、自動バレーパーキングシステムを構内物流に応用した実証実験も行う。
ボッシュは2017年からダイムラー(Daimler)と、メルセデスベンツミュージアムで自動バレーパーキングの実証を行った実績がある。人間が運転する車両や歩行者が混在する環境下で、ドライバーが下車した後の車両を無人運転で駐車スペースまで走らせた。
ボッシュの自動バレーパーキングシステムの特徴は、敷地内に設置したLiDAR(Light Detection and Ranging、ライダー)が検出した車両や空きスペースと、事前に作製された敷地内の高精度地図を照合して位置推定しながら誘導する点だという。施設側のLiDARが障害物などを検知し、パスプランニングの処理はサーバ側で行うため、車両側で高度なセンサーやコンピュータが必須ではない点も強みだとしている。今後は施設側に設置するセンサーをLiDARからカメラに置き換えていく考えだ。
今回発表した実証実験では、これを日本国内の物流事業者の拠点に導入し、給油や洗車、荷物の積み下ろし、車両のメンテナンスなどで発生する構内の移動を無人運転化する。まずは1台の車両を使って、自動バレーパーキングシステムを駐車以外に応用できることを確かめる。この実証実験でもLiDARを敷地内に設置し、物流拠点の高精度地図を作製して行う。
給油や荷物の積み下ろしなどは現状では人による作業が伴うものの、将来的には物流のさまざまなプロセスの自動化が進み、電動トラックで無線給電が使えるようになるなど、自動バレーパーキングを構内物流に応用するメリットが増えると見込む。
Bluetoothチップの個体差を利用したキーレスエントリー
年次会見では、2021年に量産予定のデジタルキー管理ソリューション「パーフェクトリーキーレス」のデモンストレーションも行った。スマートフォンにクルマのカギとしての機能を持たせるだけでなく、スマートフォンを身に着けた状態で車両まで一定の距離の範囲内に入ると、画面の操作なしに車両の解錠やエンジンの始動を行えるようにする。友人や家族などにクルマのカギの権限を付与することも可能だ。
車両とパーフェクトリーキーレスに使用するスマートフォンは、Bluetooth Low Energyで通信する。チップごとの個体差で、発する電波の増幅が1つ1つ微妙に異なることを利用して、正規のカギであることを認識する点が特徴だ。このため、友人や家族にクルマのカギの権限を付与する場合には、事前にカギとなるスマートフォンを車両側に認識させておく必要がある。
パーフェクトリーキーレスの開発に当たっては、スマートフォンの端末メーカーやBluetoothのチップベンダーと連携している。パーフェクトリーキーレスの消費電力については、試作段階のため非公表としたが、既存のキーレスエントリーシステムと同等並みに抑える。
スマートフォンのバッテリーが切れた場合に備えて、Bluetooth以外のバックアップも必要だ。これに対しては「NFC(近距離無線通信)を併用することを考えているが、車両側にアンテナを追加するためのコストが課題となる。従来のカギを念のため持ち歩いてもらうことも考えられる。対策は自動車メーカーと話し合いながら検討している」(ボッシュの担当者)。
ボッシュの競合他社はブロックチェーンをキーレスエントリーに使うことも提案しているが、ボッシュとしては「Bluetoothのチップ個体差で十分だと考えている。ブロックチェーン自体は優れた技術で、ボッシュの他のサービスや製品で使い始めた例もある。ただ、パーフェクトリーキーレスとしては計算時間が発生するのがデメリットだ」(ボッシュの担当者)。
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