絶対に止められない製造ラインのために、ダウンタイムなしのエッジシステム:FAニュース
日本ストラタステクノロジーは2019年6月4日、OT(制御技術)環境向けエッジコンピューティングシステムの新モデル「ztC Edge 110i」を発表した。同製品では障害発生時のダウンタイムをゼロとする技術を新たに実装したことが特徴だ。
日本ストラタステクノロジーは2019年6月4日、東京都内で記者会見を開催し、エッジコンピューティングシステム「ztC Edge」の新モデル「110i」を発表した。前モデルから性能を強化したとともに、障害発生時のダウンタイムをゼロとする技術を新たに実装したことが特徴だ。同日から販売を開始している。
会見に登壇した米国Stratus Technologiesでビジネスライン管理担当バイスプレジデントを務めるジェイソン・アンダーソン氏は、エッジコンピューティングに対するユーザーニーズの高まりを指摘し、同社においてもエッジ領域の製品に注力する戦略へ転換したと説明する。エッジ領域は「ITの専門家ではない人たちがサーバの構築や運用をしなければいけない現場」(アンダーソン氏)であるため、ztC Edgeは現場でも簡単に展開できることを目指して開発されたエッジサーバとなる。ブランド名であるztCは「ゼロタッチコンピューティング」を意味しているという。
今回発表された110iはztC Edgeシリーズの第2世代となる。第1世代の「100i」と比較してプロセッサ、ストレージ、システムI/O性能を向上させた。110iではプロセッサとしてIntel Core i7-8700Tを搭載する他、ストレージは容量2TBのSSD、ユーザーが利用できるシステムI/OはHDMIおよびギガビットイーサネットが6ポート、USB3.0が4ポート。メモリは100iと同じくDDR4-2400を32GB搭載する。この性能向上により、110iでは仮想マシンを最大で6台同時起動できるとする。
また、ztC Edgeシリーズは2ノードを単一システムとして提供する。ノード間はイーサネットで接続されており、一方のノードに障害が発生した場合は自動的にもう一方のノードへワークロードを引き継がれるため、システム全体で高い冗長性と可用性を確保できることが特徴だ。110iではノード間リンクのイーサネットを10Gbpsに高速化し、可用性を確保する手法としてこれまでの「ハイアベイラビリティ(HA)モード」に加えて「フォールトトレラント(FT)モード」を追加している。
HAモードでは仮想マシンのデータがノード間で同期されている。障害発生時にはワークロードが正常稼働中のノードに移行されるが、同モードでは仮想マシン立ち上げなどで数分間のダウンタイムが発生してしまう。今回新設されたFTモードでは、両ノード間で仮想マシンのCPUおよびメモリデータの同期も実行するため、障害発生時にもダウンタイムを発生させず業務を続行できる。また、ノードの故障時にはストラタスのサポートから翌営業日以内に交換用ノードが発送され、現場でノード交換と配線作業を行うだけで自動的に復旧処理が行われる。専門要員が不在である場合でもシステムの迅速な冗長性再確保が可能だ。
製造業の現場で求められるセキュリティについても、ztC EdgeシリーズではハードウェアおよびOSのレイヤーで確保しているとし、ホワイトリスト/ブラックリスト型のホストファイアウォールやブートプロセスの保護、使用しない物理I/Oのロックダウン機能などを採用する。また、110iではTPM2.0を新たにサポートするとともに、OPCによるフルスタックモニタリング機能も活用できる。
ztC Edgeシリーズのエコシステムも拡大を続けており、ソリューションパートナーとしてEdgecrossコンソーシアムやe-F@ctoryアライアンス、Rockwell Automation、GE Digitalが参画していることも紹介された。
ztC Edgeシリーズは今後も製品ラインアップの強化を図るとし、後継機ではGPUのサポートやセルフヒーリングなど、よりエッジ領域で求められるAI(人工知能)処理性能や可用性を確保する各種機能が搭載される見込みだ。販売目標については「今後数年間に数百ユニット規模を目指す」(アンダーソン氏)としている。
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