ルネサスがAFE混載マイコンを発表、誤差0.1%未満で単体ADCいらず:組み込み開発ニュース
ルネサス エレクトロニクスは2019年5月28日、高精度なアナログフロントエンド(AFE)を搭載し、補正なしで誤差0.1%未満の計測を可能とする32ビットマイコン「RX23E-A」を発表した。
ルネサス エレクトロニクスは2019年5月28日、高精度なアナログフロントエンド(AFE)を搭載し、補正なしで誤差0.1%未満の計測を可能とする32ビットマイコン「RX23E-A」を発表した。同製品は製造装置、計測機器などのアプリケーションを想定しており、同日よりサンプル出荷を開始した。量産出荷は同年12月を予定している。
製造装置の加工精度や計測機器の測定精度に対する要求が高まる中、これら装置に搭載されるマイコンにもセンサーデータの安定、高精度な測定が求められている。従来のマイコンにおいても家電やBA(ビルディングオートメーション)用途などに向けた中精度のAFEが付属する製品は存在している。一方で、産業用途向けの温調器や力覚センサーでは、より高精度な特性を持つA-Dコンバーターやオペアンプなどを別途単品で設ける必要があった。
RX23E-Aでは高精度なAFEをマイコンと統合し、1チップで高精度なアナログ信号の計測と解析を可能にしたことが特徴だ。ΔΣ型の24ビットA-Dコンバーターを2チャンネル搭載し、最大128倍のプログラマブルゲインアンプを内蔵する。オフセットドリフトは10nV/℃、ゲインドリフトは1ppm/℃、入力換算ノイズは30nVrms。同社の従来製品からノイズ特性を大幅に改善させたとともに、単品のA-Dコンバーターと比較しても同等以上の性能を実現したとする。
「ルネサスとして初めての高精度AFE混載マイコン」(同社インダストリアルソリューション事業本部 IAソリューション事業部 産業ドライブ制御ソリューション部 担当課長 津田和利氏)となる同製品だが、その開発では回路とプロセスの両面から多くの改善がなされている。同製品はフラッシュ混載プロセスで製造されるが、同プロセスにディスクリート製品で用いられる高精度な抵抗やバイポーラトランジスタといったアナログ専用素子技術を追加。また、新規にアナログIP(Intellectual Property)を開発し、それぞれのAFEでノイズ低減に向けた設計を行った。
MCUは動作周波数32MHzのRXv2コアを搭載しており、温度データを活用した適応制御や6軸のひずみデータを活用した逆行列演算も同マイコンで実行可能だ。センサーやロボットなどのエッジ側でノイズ除去や演算処理を行うことが可能なため、ネットワークやサーバの負荷軽減にもつながる。
同製品はルネサス セミコンダクタ マニュファクチュアリングの川尻工場(熊本市)で生産される。価格は「現在のところ非公開」(同社インダストリアルソリューション事業本部 IAソリューション事業部 産業ドライブ制御ソリューション部 部長 亀川秀樹氏)とするが、「マイコンと高精度AFEを1チップに統合したところに価値がある」と自信を示した。また、今後も高精度AFEを搭載したマイコン製品の第2弾や第3弾が登場することを予告。変換速度が求められるユースケース向けに、逐次比較型A-Dコンバーターを搭載する製品も検討を進めているという。
同社は高性能AFE搭載マイコンの販売目標として、2023年度に10億円、2025年度に30億円を狙う。RX23E-Aを搭載する評価ボードも貸し出しが開始され、希望する顧客はプログラミング負担を減らした新開発の評価用ソフトウェアとともに同製品を試用することが可能だ。
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