軌跡をコントロールするレーザー加工技術、IoTによる自動化など工場の進化を訴求:金属加工技術(3/3 ページ)
アマダグループは2019年5月18日〜6月22日までユーザーイベント「AMADA INNOVATION FAIR 2019」(同社伊勢原事業所)を開催。その中で生産性と精度の両立を実現する新たなレーザー加工技術「LBCテクノロジー」搭載のファイバーレーザーマシンや、IoT(モノのインターネット)を活用した新たな工作機械の活用など、さまざまな新製品や新技術を紹介している。
IoT技術を標準搭載した「Vfマシン」化
IoTへの取り組みも強化する。アマダが提供する機器や金型、ソフトウェアの情報を、独自の通信ゲートウェイ「V-factory Connecting Box」を通じて収集し、稼働監視や見える化などを実現することで、価値を生み出すサービスとして「V-factory」を2018年5月から展開している※)。
※)関連記事:機械が最高のパフォーマンスを発揮する工場へ、アマダが描くスマート化の理想像
「V-factory Connecting Box」は、産業用PCと通信機器とディスプレイを一体化したボックスで、エッジコンピューティングとしての役割と、IoTゲートウェイとしての役割、稼働情報を表示するディスプレイの役割などを担う。これらで得た設備の稼働状況などを遠隔監視できるWebアプリケーションの「My V-factory」で見える化する。「My V-factory」ではさまざまな見せ方を可能とするアプリケーションを用意。故障などに対応するため、使用機械の部品などを注文できる「V-Parts」や金型などの情報を管理する「V-tool」などを展開している。
これらを活用することでアマダの機械を導入した板金工場などの運営を支援する。「アマダでは創業以来、直接アフターサービスを行ってきた歴史があり、このサービスをさらに強化し続けていく考えである。今後さらにアフターサービスを強化する上でデジタル化やIoTの活用は欠かせないものである」とアマダ 執行役員 サービスBiz推進部門長の横山匡氏はアフターサービスについての考えを述べる。
これらの取り組みをさらに進展させるのが「Vfマシン」である。アマダでは2019年4月から、主力機種のほとんどで、「V-factory Connecting Box」を標準搭載し、マシンから直接「V-factory」に接続可能とする「Vfマシン」とすることを明らかにした。
この狙いについて横山氏は「V-factoryの展開開始後100社以上と契約しサービス提供を行ってきた。これらで得られた成果には手応えを感じている。さらにこれらの成果を拡大し、アマダが提供する直接アフターサービスを製品の価値につなげていくために、提供する機械に標準搭載することで、新たなサービス基盤としていくことを考えた。さらにこの基盤を強化していくことで付加価値を拡大していく」と述べている。
具体的には、機械の稼働データを基にアマダが安定稼働を支える「安心サポート」や、計画生産に向けた課題解決を支援する「課題解決サポート」、予期せぬアラーム停止からの早期復旧を支援する「早期復旧サポート」などを展開する計画である。
「安心サポート」は、機械の稼働情報から機械の保守や定期交換部品の保守などが必要な状況を見つけ、「V-factory」および訪問などにより保全を実現するというものだ。「課題解決サポート」は稼働情報からの気付きのレポートを発行しそれを基にユーザーと課題の考察を行い、生産性改善に向けての課題解決を目指すものである。「早期復旧サポート」は予期せぬアラーム停止を検知すると稼働情報により原因を調査し解決方法を連絡するというものだ。従来は、訪問して停止要因などを確認し、その後対応策を決め、部品などを手配して、復旧に取り組むという流れになり、稼働停止時間が長くなる状況があった。これらを事前に機器の情報を確認できるようにすることで、最短化できるという点が特徴である。
その他、カメラと連動させ「V-factory」の稼働情報と映像データを組み合わせて遠隔監視を行うソリューションや、モバイルで稼働情報を確認可能とするようなソリューションなども用意しているという。横山氏は「Vfマシンとして標準化しサービス基盤として確立させることで、アマダブランド全体につながるさまざまな新たな取り組みを実施できるようになった。今後もさらにアプリケーションなどを拡充していく」と述べている。
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